令和8年度長崎県地域おこし協力隊員・担当職員合同研修会 〜制度の誤解を解き、共に動くパートナーシップの作り方〜
2026年6月29日(月)、長崎県庁をメイン会場、佐々町地域交流センターをサテライト会場として、「令和8年度長崎県地域おこし協力隊員・担当職員合同研修会」を開催し、県内各自治体の地域おこし協力隊担当職員23人、長崎県内の現役隊員22人、合計45人が参加しました。
今回の研修テーマは、「制度の誤解を解き、共に動くパートナーシップの作り方」です。地域おこし協力隊の活動は、隊員一人の力だけで成り立つものではありません。隊員、自治体職員、地域住民が、それぞれの立場や考え方の違いを理解し、対話を重ねながら、共に地域の未来を考えていく必要があります。
一方、現場では制度や役割に対する小さな認識の違いが積み重なり、活動の停滞や関係者同士のすれ違いにつながることもあります。
本研修では、現役の地域おこし協力隊員、自治体担当職員、受け入れ地域の関係者が一堂に会し、制度の最新動向を学ぶとともに、協力隊経験者の実体験を通じて、地域で信頼関係を築き、共に活動を進める方法を考えました。

1.本研修の概要
日時:2026年6月29日(月)13:00〜17:00
メイン会場:長崎県庁1階 大会議室B
サテライト会場:佐々町地域交流センター2階会議室
参加者:長崎県内の地域おこし協力隊担当職員23人、現役地域おこし協力隊員22人
主催:長崎県
企画・運営:一般社団法人長崎県地域おこし協力隊ネットワーク(NCN)
2.実施レポート
①導入セッション:長崎県の地域おこし協力隊を取り巻く現在地


オープニングでは、一般社団法人長崎県地域おこし協力隊ネットワークの代表宮田から、県内の地域おこし協力隊を取り巻く現状と、NCNの活動について紹介しました。
【内容】
研修時点で、県内21市町に82名の地域おこし協力隊員が活動している
長崎県内における任期終了後の定住率が、51.1%から60.9%に向上
離島・半島が7割を占める長崎県では、任期終了後の生業づくりを重視し、任期2年目からキャリア設計を始めることが重要
また、隊員と担当職員が定期的に話し合う時間を確保することや、自治体を越えて相談し合える関係をつくることの重要性も共有しました。
②基調講演:データと最新施策から読み解く、地域おこし協力隊の「現在地」と「これから」

地域おこし協力隊制度の現状と、最新施策について総務省より説明いただきました。
【講師】
地主野の香氏[総務省地域力創造グループ地域自立応援課 課長補佐]
【内容】
全国では8,196名の地域おこし協力隊員が活動しており、任期終了後も活動地域やその周辺に定住する人の割合が70%を超えている
今年度から、地場産業に関係する起業や事業承継などに取り組む隊員を対象に、任期を2年間延長できる特例が導入された。任期延長を活用するためには、自治体が「どの地場産業を育て、応援していくのか」を明確にし、総合計画や産業振興計画などとの関係を整理することが重要である
総務省 地域力創造グループ 地域自立応援課 地域おこし協力隊について地域おこし協力隊アドバイザー派遣制度をはじめ、隊員や自治体が活用できる国の支援策が用意されている
【質疑応答】
Q1. 伊王島地区では小規模な事業所が多く、任期終了後の仕事とのマッチングが難しい状況。隊員は活動地域内に居住しなければならないのか?
A1. 国の制度上は、原則として活動地域が所在する市町村内に居住することが求められている。一方、長崎市の設置要項で活動地域内への居住を定めている場合は、長崎市が地域の状況を踏まえて独自に設定している要件。隊員の居住地を活動地区内に限定するか、市町村内まで広げるかについては、制度の趣旨、地域との関係づくり、住宅事情、任期終了後の仕事などを踏まえて、自治体内で検討する必要がある。地域おこし協力隊制度の地域要件については、今後、国勢調査の結果などを踏まえて見直される予定。
Q2. 地場産業に関係する活動を行う隊員について、任期を2年間延長できる制度が始まったが、延長後も雇用や事業を継続できるようにするには、どのような準備が必要か?
A2. 任期延長制度は始まったばかりであり、現時点では事例が多くない。まず自治体が、地域としてどの地場産業を育て、どのような人材や事業を応援していくのかを検討する必要がある。単に一人の隊員の任期を延長するのではなく、総合計画や産業振興計画などに位置付け、地域の産業政策として説明できる状態をつくることが重要。
【参加者の感想】
2年の延長など、新しく導入された制度を知れた
協力隊制度が理解できた
③基調講演:「制度の誤解を解き、武器に変える」ためのマインドセット

一般社団法人佐賀県地域おこし協力隊ネットワークの代表を務める門脇氏より、自身の地域おこし協力隊としての経験や、現役隊員・自治体を支援してきた経験をもとに、地域で活動を進めるために必要な考え方を紹介しました。
【講師】
門脇恵氏[一般社団法人佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク 代表理事、総務省 地域おこし協力隊サポートデスク 専門相談員、総務省 地域おこし協力隊アドバイザー]
【内容】
地域おこし協力隊は、隊員、自治体職員、地域住民の三者が協働する制度であり、いずれか一者だけが活動を背負うものではない
地域の行事への参加、人の話を聞くこと、一緒に作業することなど、日常的な関わりの積み重ねが「信頼貯金」になる
隊員と担当職員が互いの経歴や価値観、得意なこと、苦手なことを理解し、定期的に対話することが重要
担当職員には、隊員と地域住民が出会い、関係を築くための「関わりしろ」を意図的につくる役割がある
3年後の進路を最初から決め切るのではなく、目の前の人や活動に向き合うことが、結果として隊員自身の仕事や暮らしにつながる
1年目から活動報告会などを行い、隊員の活動や考えを地域に伝えることも、信頼関係や応援者を増やすうえで有効
【参加者の感想】
これまで苦労したことなどを赤裸々に伝えてくださったので、今後の活動にも非常に活かせると思った
職員と地域おこし協力隊の間にある考え方のギャップ等、自身の経験からお話しされていて興味深く聴くことができた
④ワーク:自分と地域の未来をつなぐ


基調講演後には、「自分と地域の未来をつなぐ」をテーマとしたワークを行いました。
参加者は、ワークシートを使いながら、次の内容について整理しました。
自分ができること、得意なこと
自分がやってみたいこと
地域から求められていると感じること
自分にできることと、地域に求められていることの接点
明日から取り組めそうなこと
ワークでは、自分が「地域から求められている」と考えていることが、本当に地域の人たちの思いと一致しているかを確認する必要性も共有されました。自分の考えを言語化したうえで、地域住民や担当職員、ほかの隊員と話しながら確かめていくことが、自分と地域の双方にとって意味のある活動につながります。
【参加者の感想】
県内の協力隊や他自治体の職員と話す機会があってよかった
講話を受けて自身の今後の活動、および他隊員の学びを共有できた
⑤座談会:地域での信頼貯金がもたらすもの

座談会①では、地域おこし協力隊経験者で現在は隊員支援に携わる二人を迎え、地域おこし協力隊協力隊として地域に入った経験や、任期終了後の仕事と暮らし、地域との信頼関係が現在にどのようにつながっているかについて話を伺いました。
【登壇者】
吉村佑太氏[地域おこし協力隊サポーターズ鹿児島 代表、総務省 地域おこし協力隊サポートデスク 専門相談員、総務省 地域おこし協力隊アドバイザー]
門脇恵氏[一般社団法人佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク 代表理事]
宮田友香[NCN代表理事]モデレーター
【内容】
吉村氏は、鹿児島県日置市で同市初の地域おこし協力隊員として活動し、竹林整備やマルシェの運営など、地域のさまざまな活動に関わった
吉村氏が事業継続の危機に直面した際には、協力隊時代から関係を築いてきた地域住民が店を支えた。任期中の信頼関係が、卒業後の仕事や暮らしの基盤になった両氏とも、着任時には現在の仕事や暮らしを具体的に想像していたわけではなく、目の前の活動や人との関係を大切にした結果として、現在の道につながったと話した
地域住民との関係づくりでは、何度も地域に足を運び、挨拶を重ね、一緒に汗をかくことが大切であり、すぐに成果を求めず、小さな接点を積み重ねる「信頼貯金」が重要であることが共有された
【質疑応答】
Q1.地域住民と直接関わるには、どうすればよいか?
A1.地域に何度も足を運び、自分の顔を覚えてもらうことが大切。挨拶回りをする、地域行事に参加する、地域の良いところを見つけて伝えるなど、外に出る理由をつくり、小さな接点を繰り返していく必要がある。すぐに成果を求めるのではなく、「また来たね」と言ってもらえる関係をつくることが、相談や協力につながる。担当職員も隊員だけに任せるのではなく、地域のキーパーソンを紹介するなど、最初の接点をつくることが重要。
Q2.着任する前から、現在のような仕事や暮らしになることを想像していた?活動を続けるエネルギーはどこから生まれた?
A2.着任した時点では、その後の仕事や暮らしを具体的に想像していたわけではない。3年後の姿を最初から無理に決めるよりも、目の前にいる人や活動に一生懸命向き合うことが大切。新しいことに挑戦し、うまくいかなくても簡単に諦めず、地域の人と一緒に汗をかく姿を地域の人は見ている。活動を続ける中で信頼が生まれ、次の挑戦につながる
⑥座談会:地域に根ざし、信頼を編み上げる「対話」のリアル

座談会②は、佐々町地域交流センターのサテライト会場から配信しました。隊員、担当職員、協力隊経験者という異なる立場から、受け入れ体制や地域との関係づくりについて話しました。
【登壇者】
前田鉄兵氏[佐々町企画商工課 係長]
中野祥平氏[佐々町地域おこし協力隊]
小吹雅斗氏[松浦市地域おこし協力隊OB]
竹内章[NCN理事]=モデレーター
【内容】
佐々町では、過去の隊員受け入れにおいて、庁内の意思統一が十分ではなく、担当者によって活動方針が変わってしまったことが反省点として挙げられた
その経験を踏まえ、今回の受け入れでは、ミッションを提示するだけでなく、担当職員が隊員の味方となり、必要なときには「盾」になる姿勢を重視
中野氏が地域の祭りでDJを担当した事例や、小吹氏がバレーボールを通じて地域との関係を築いた事例から、趣味や得意なことが地域との自然な接点になることが紹介された
定例会を始めたことで、立ち話では相談しにくい内容や、小さな困りごとについても共有できるようになった。複数の課や職員が参加することで、一人の担当者だけでは思い付かなかった意見や人の紹介、制度の活用につながった
隊員が「会いたい人」や「取り組みたいこと」を担当職員に伝え、職員が庁内や地域との最初の接点をつくるなど、継続的な対話を通じて支援方法を調整することが重要
【参加者の感想】
リアルな話で参考になった
定例会の必要性は感じたので実践したい
⑦ワークの振り返り


二つの座談会終了後、参加者は再び「自分と地域の未来をつなぐ」のワークシートに向き合いました。講演や座談会で得た気づきをもとに、最初に書いた内容を見直し、グループ内で共有しました。
自分が地域から求められていると考えていたことが、本当に地域の思いと一致しているのか。自分ができることや得意なことを、地域の中でどのように生かせるのか。参加者は、ほかの隊員や担当職員の意見を聞きながら、それぞれの考えを深めました。最後には、研修で得た気づきから、明日から実践できそうな行動を一つ選びました。
3.総評






研修の最後には、登壇者と主催の長崎県から当日の振り返りと、参加者に向けたメッセージが寄せられました。
さまざまな地域で活動してきた先輩たちの経験を聞くことで、地域との関わり方や、今後の活動につながる多くのヒントを得られた。今回学んだことを、自身の活動の中で実践していきたい[佐々町地域おこし協力隊・中野氏]
過去の協力隊受け入れにおける反省や、現在の隊員との関係について話すことで、担当職員として大切にしたいことを改めて整理できた。今後も定例会などを通じて対話を重ね、隊員に合った支援方法を一緒に考えていきたい[佐々町企画商工課・前田氏]
情報交換を通じて、自分一人では気付けなかった視点を持ち帰ることができるのが、このような研修の大きな価値である。地域の課題を一人で抱え込まず、隊員、職員、地域住民がチームとなって取り組むことが重要[地域おこし協力隊サポーターズ鹿児島代表・吉村氏]
ワークを通して、自分が普段考えていることを言葉にすることで、新たな気付きが得られたのではないか。「地域から求められている」と考えていることが、実際の地域の思いと合っているかを確認し、明日からできることを一つ選んで実践してほしい[一般社団法人佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク代表理事・門脇氏]
隊員と自治体職員が一緒に参加する研修は貴重であり、双方がそれぞれに不安や「これでよいのだろうか」という思いを抱えていることが分かった。地域で活動を続けるためには、悩みや気持ちを率直に話せる相手を見つけることが大切であり、総務省としても引き続きさまざまな形で支援していきたい[総務省地域力創造グループ地域自立応援課・地主課長補佐]
協力隊の「定住」だけを最初から目的にするのではなく、まず地域を知り、地域を好きになり、その結果として住み続けたいと思ってもらえることが大切。メイン会場とサテライト会場をつないだ今回の研修形式についても、県内各地の参加者が交流できる有意義な機会になった。県として今後も隊員と自治体への支援を続けていく[長崎県地域づくり推進課半島・過疎対策班・北村哲也参事]
4.研修を終えて

地域おこし協力隊制度は、立場も視点も異なる隊員・自治体・地域が協力して行うからこそ、他ではない面白さと大変さがあります。
たくさんの地域協力活動を見てきて感じるのは、今は大変でも、覚悟を持って挑戦を続けていれば気持ちが伝わるときがくる、ということです。諦めず対話と行動を小さくも続けることが大切だと思います。
その過程で、つらいとき、誰かに話を聞いてほしいときは、今日研修で出会った仲間やOBOG、NCNや総務省サポートデスクなど、誰でもいいから連絡をしてください。1人で悩まずに、仲間の存在や先輩の経験をちゃんぽんして、自分の力に変えてもらえたら嬉しいです。
今回の研修は、初の2拠点開催、そして初の職員・隊員合同開催と、まさにはじめてづくしの挑戦となりました。
無事に開催することができたのは、総務省地域力創造グループ地域自立応援課の地主さん、総務省サポートデスクの門脇さん・吉村さん、佐々町企画商工課の前田さん・中野隊員、松浦市隊員OBの小吹くん、そして運営に携わってくださったすべての皆さまのお力添えがあってこそです。
今回の研修で得た学びを今後の活動にしっかりと生かし、私たちNCNも、長崎県の地域力向上に向けてより一層尽力してまいります。
最後になりますが、皆さまのすこやかでゆかいな日々を心よりお祈り申し上げ、お礼のご挨拶とさせていただきます。
本当にありがとうございました!
一般社団法人長崎県地域おこし協力隊ネットワーク
代表理事 宮田友香
令和8年度第1回長崎県地域おこし協力隊員・担当職員合同研修会スタッフリスト
◎企画:小宮大輔[NCN副代表理事]
◎企画サポート:宮田友香[NCN代表理事]、久米川泰伸[NCN常務理事]
◎当日運営:宮田友香、久米川泰伸、斎藤節子[NCN理事]、竹内章[NCN理事]倉林実央[NCN理事]、池田蝶子[川棚町地域おこし協力隊OG]、伊藤優美[諫早市地域おこし協力隊OG]、大山直昭[川棚町地域おこし協力隊OB]
◎レポート記事:倉林実央
活動実績をシェアする