
元・タウン情報誌編集長が日本最西端のまちを選んだ理由。体験で伝える“小さなスケール”での暮らし
2026年10月更新
現在募集中の地域おこし協力隊情報
長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。
海で、山で、おじいちゃんも子どもも「くむ・あむ」
日本列島の最西端に位置する、長崎県西海市で暮らすはしもとゆうきさん。
農林漁業体験民泊を取りまとめる【一般社団法人 山と海の郷さいかい】の代表理事です。

【一般社団法人 山と海の郷さいかい】の事務所にてはしもとさんは他にも、西海市内にある農的暮らしの体験拠点【エコヴィレッジ さいかい元気村】の運営や、地域拠点【HOGET】の立上げ、子どもの遊び場【あっちこっちPOKKE】の立上げ・運営にも参画。“誌面”にとどまらない“地域”の編集者として活動しています。

西海市の地域拠点【HOGET】。【一般社団法人 山と海の郷さいかい】の事務所はHOGET内にある
事務所入口にある黒板。はしもとさんの手描きイラストも仕事仲間は、年齢も職業もさまざま。農村や漁村で暮らすおじいちゃん、おばあちゃんから、長崎県内外で注目を集める若手経営者やデザイナーも。
幅広い活動とつながりの真ん中にあるのは、はしもとさんが抱く活動理念。
「くむ・あむ」
わかりにくくてもいい。小さくてもいい。1人の人の根本的なしあわせを汲んで、取りこぼさずに編んでいく。そんな理念を実践していく中で、はしもとさんの活動は誌面の編集からコミュニティデザインへとゆるやかに広まっています。

はしもとさんは体験民泊などを通じて“ローカリゼーション”を編集・発信
体験民泊では主に都心からの修学旅行生に、昔ながらの農林漁業や田舎暮らしの体験を提供そんなはしもとさんのターニングポイントが、西海市の農林漁業体験民泊との出会い。
生まれ育った長崎市から移住するきっかけが、地域おこし協力隊でした。

HOGETでは体験民泊受け入れ家庭の生産品も販売。こちらのラベルもはしもとさんの手描き長崎県21市町に精通する元編集長が、西海市を選んだ理由
はしもとさんがもともと、地方での暮らしに興味を持ったのは、大学3年生になる前の春休み。
日本とほぼ同じ面積に約500万人が暮らすニュージーランドへ短期留学したときのこと。
場所は、ニュージーランドの人口の3割強が居住する国の最大都市・オークランド。そのメインストリートでは、17時には店が閉店。閉店後は家族や友人とゆっくり過ごしたり、休みの日には、自然の中でくつろぐ時間を大切にする暮らし。
「この国の人は、自分の人生で、何を大切にしたいか優先順位がハッキリしているんだなぁ」と、はしもとさんは経験のないライフスタイルを見て驚いたそう。

ニュージーランドの最大都市・オークランドに留学当時の写真留学から帰国後もその光景が頭から離れず「何のために働くのか」何度も自問自答。
よく生きるために働くはずなのに、過労死する人。健やかに生きるために食べるのに、食べ物が原因で病気になる人。なぜ?どうすれば、人はしあわせに生きられるのか?
ぐるぐると何度も何度も考え、はしもとさんが行き着いたのが“ローカリゼーション”。
“ローカリゼーション”とは、いわば、“地産地消”したり“地域のつながり”が深い暮らし。地域の中で資源やお金を回して、自立して経済を循環させるという考え方。
2009年、はしもとさんは“ローカリゼーション”をテーマにフリーペーパーの自費出版をはじめ、編集者としてのキャリアをスタート。同時に大学を中退しました。
2011年、長崎県内で毎月3万部を発行する(株)ながさきプレスに入社。2015年、ながさきプレス編集長に就任し、県内21市町の地域情報を編集しながら「実感の伴う小さなスケールでの暮らし」の情報を誌面に散りばめ、忙しくも楽しく発信していました。
しかし、入社して約5年が経った頃、編集長として毎月の締め切りに追われて会社に缶詰めの日々。
「実感の伴う小さなスケールでの暮らし」と乖離していると感じたはしもとさんは一旦立ち止まり、2016年、(株)ながさきプレスを退社。

編集長時の制作コンセプトは「“長崎で暮らす”を、もっと楽しく、もっと豊かに」より小さなコミュニティへの移住を考え始めたとき、西海市で農林漁業体験民泊に取り組む【山と海の郷さいかい(任意団体)】から、活動を広げるためにパンフレットをつくりたいとの相談を受けました。
パンフレットの制作を受けたはしもとさんは、農村や漁村に足を運び、地域のおじいちゃんやおばあちゃんを取材したり、暮らしの様子を撮影したり。そのうち、思いがけない気づきがありました。
取材先の農林漁業民泊の現場では、地産地消や物々交換が今も当たり前。食卓に並ぶ料理すべてが地元産やおすそ分けなんてことも。
鉄道も高速道路もないまちだからこそ、“ローカリゼーション”を体現したような、地産地消や地域のつながりがある「実感の伴う小さなスケールでの暮らし」が残っていたのです。
「自分の求めていた暮らしがここにあった!」

はしもとさんが西海市とのご縁がつながった【山と海の郷さいかい(任意団体)】のパンフレット「農業体験や食の体験を通して、この土地の暮らしの魅力を伝えていきたい」
【山と海の郷さいかい】のメンバーの思いに深く共感したはしもとさん。また、「体験民泊が提供する商品は、農村や漁村にある当たり前の暮らし。新しく何かをつくっていないところや、提供する側にも、される側にも、無理がない」ところにも魅力を感じたそう。
一方、活動を本格化するため、継続的に力を貸してくれる存在を求めていた【山と海の郷さいかい】のメンバー。
両者の思いとタイミングが重なり、はしもとさんは自然な流れで西海市へ移住。2018年1月、地域おこし協力隊に着任しました。
“実感の伴う小さなスケールでの暮らし”を伝え、つなぐ
地域おこし協力隊時のミッションは「農林漁業体験民宿(体験型民泊)事業」の推進。
現在、はしもとさんが代表を務める【一般社団法人 山と海の郷さいかい】は、当時は任意団体。体験民泊の受け入れも1校の修学旅行の受け入れからスタートしました。
西海市で“受け入れ家庭”の取材を繰り返し、体験民泊の“プログラム”に編集。任意団体のメンバーのつながりから一軒一軒声掛けを積み重ねていくうちに、体験民泊の受け入れ家庭は約10件ほどだったのが40件超え。関西や関東の旅行会社へ何度も営業に出向き、体験民泊に訪れる修学旅行生も年間2,000名ほどに。



民泊体験の開催場所は、海、山、一般家庭など多彩。地元住民がインストラクターを務める2021年1月、3年間の任期を終えた終えた後も、はしもとさんは西海市に定住。
任期最終年に地域おこし協力隊が活用できる起業補助金を使って、任意団体だった【山と海の郷さいかい】を2020年7月に一般社団法人化しており、代表理事として現在(2023年3月)も活動を続けています。
2023年3月からは地域おこし協力隊1名を新たなスタッフとして迎え、パートさんも含めた4人体制で、活動をさらに推進していく予定です。
「体験民泊は、外向けの営業や広報、内向けの受け入れ家庭とのコミュニケーションの両輪が大切。けれど、一人では担えない規模になってきたので、新たに地域おこし協力隊を迎えて、チームで体験民泊事業を持続させていきたい」と考えています。
前向きに体験民事業を展開する一方「地域移住は無条件に何もかもいいわけじゃない。苦しいこともある。どこで暮らしても良し悪しはある」というはしもとさん。
「今の暮らしは、自身の理念のフィールドワークとして捉えています。無理して繋がらなくていいとは思うけれど、災害時に助け合えるかは大切」
はしもとさんが、お友だちになりたい人を探す感覚で読んでほしいというのが、“ニュー・トラベル・マガジン RUCK(リュック)”

【一般社団法人 山と海の郷さいかい】の事務所。2023年春より3人体制に2022年7月、古巣の(株)ながさきプレスに企画を持ち込み、西海市がある西彼杵半島一帯の観光情報誌として制作。
もともとは、体験民泊などで西海市に来た観光客が、その後に行く場所やつながりたい人を探しやすくなるようにと企画。観光客はもちろん、地元の人も知らないお店を見つけたり、新しいつながりができたり、にしそのぎ半島の地域全体にプラスになるよう編集しました。
コミュニティデザインやまちづくりと言っても、まちをつくることはできない。目の前の人と関わることからはじまる。
そんなはしもとさんの考えと、人とつながるヒントが随所に散りばめられています。

約160ページ、11地域の情報を約4ヶ月で編集。情報を丁寧に汲み上げて編まれた誌面はまるで辞書のよう
RUCKの冒頭ページ。導入文にははしもとさんの思いと提案が込められている体験してみる?はしもとさんの感受性のお手入れ
編集という視点で、たくさんの人・事・物やそれらの情報の中にいるはしもとさん。【エコヴィレッジ さいかい元気村】の受付をしながらブッシュクラフトに精を出したり、ハンモックを広げて本を読んだりする時間を大切にしています。
エコヴィレッジ さいかい元気村
https://genki-mura.com/

【エコヴィレッジ さいかい元気村】にはみかん畑やくぬぎ林、ピザ窯やツリーハウスも「感じる感覚や感性が今の世の中は閉じている。つぶさに観察すればいろんな発見がある」

ピザ窯と畑の間の道。季節の草花が咲いていた
施設内では、所定の方法を守れば直火での焚き火が可能。巻の販売も「生活全部が編集的な行動。もともと、地域おこしがしたかった訳ではなく、自分のやりたい暮らしを追い求めるとこうなった」

栗林のハンモックエリア。慣れた手つきでハンモックを組み立てていく
話をしながら、ちょうどいい木の枝を拾ったり、ナイフで削ったり調整したり「体験民泊を通じて、こんな生き方があるのかと感じてもらえたらうれしい」
自らの感受性を手入れできる環境に身を置き、多様な人の声を汲み上げる。関わる人たちに無理のない形で、体験民泊プログラムや誌面、イベントなどに編み込んでいく。“ローカリゼーション”を伝えるはしもとさんの取り組みは、地域を問わずつながり始めています。

はしもとさんの理念に深く触れることができる
「誰もが自分らしく、すこやかにいきいきと在る世界」を目指して
https://nagasaki-keizai.jp/contribute/_contribute/4450
(ながさき経済web/株式会社長崎経済研究所)
はしもとさんの協力隊のときの詳しい様子はこちらでも紹介されています
農泊が田舎暮らしを守る活力に。編集する地域おこし協力隊を訪ねる
https://sotokoto-online.jp/local/2335
(未来をつくるSDGsマガジン ソトコト)
自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト
地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
弊社では、着任後のミスマッチを防ぐため、自治体に伴走して募集ミッションや受け入れ環境の設計からサポートしています。
現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。
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