
目指すは「あおさ王国」! 海に惹かれて新上五島へ渡ったあおさ王子の挑戦
2026年10月更新
現在募集中の地域おこし協力隊情報
長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。
子どもの頃から抱いていた思いを胸に、福岡市から長崎県の離島・新上五島町へ移住した梶山寛泰さん。未経験の水産業に地域おこし協力隊として飛び込み、そこで出会ったのが「あおさ」でした。
失敗を重ねながら養殖や加工の技術を身につけ、今では「あおさ王子」として、島に新たな仕事を生み出そうと挑戦を続けています。
最初から進む道が見えていたわけではありません。海に惹かれ、島へ飛び込み、あおさと出会ったことで少しずつ形になっていった、自分らしい生き方。
新上五島の海であおさを育てながら、自らの道も切り拓いてきた梶山さんの物語をうかがいました。
<梶山寛泰(かじやま ひろやす)さんプロフィール>
2020年 家族5人で福岡市から新上五島町へ移住
2020年4月〜2025年2月(コロナ特別措置のため期間延長)新上五島町地域おこし協力隊として漁協に所属し、水産加工品の付加価値向上や販路開拓、海藻養殖の研究などに従事
協力隊退任後、あおさの養殖・加工・販売を行う事業を立ち上げ、「あおさ王子」として新上五島町であおさの商品づくりや販路開拓に取り組む
見たい世界を「いつか見る」にはしたくない
佐賀県出身で、福岡市で介護の仕事をしながら家族と暮らしていた梶山さん。
子どもの頃から、いつか海の近くで暮らしたいという思いがありました。その想いが大きく動き出したのは、奥様の実家がある新上五島町を訪れたときのこと。ここの海に出会った時、こう感じたそうです。
「海の透明度がすごく高くて、泳いだときに惹き込まれたんですよね。ここだったら、子どもの頃から思っていた“海の近くで暮らしたい”という夢を叶えられるんじゃないかなと」
とはいえ、当時すでに3人のお子さんもいました。
「いつ行こうかって、ずっと考えていました。2年くらい悩みましたね」
最後に背中を押したのは、「やりたいことをやるなら、元気な今なんじゃないか」という思いでした。
「年を取ってから、こういう場所でのんびり暮らすという選択肢もあったと思います。でも、体力がないと何もできないんじゃないか。やるんだったら若いうちがいいなと思いました」
そうして梶山さん一家は、安定した暮らしを離れて新上五島へ。
思い描いていた暮らしを「いつか」のままにはしたくない。自分たちが本当に望む人生を選び始めたのです。
憧れていた海の世界へ飛び込みました。

あおさの養殖場を案内してくれる梶山さん大好きだった海の世界へ。未経験から始まった島の仕事
新上五島へ移住した梶山さんは、地域おこし協力隊として漁協で仕事を始めました。
福岡では介護の仕事をしていた梶山さんにとって、水産業はまったくの未経験。それでも、もともと魚釣りや海が好きで、海に関わる仕事には以前から興味がありました。
「とりあえず協力隊として入って、水産業全般を知りたい。その上で、何か自分にできることがあればいいなと漠然と思っていました」
まずは海の世界へ飛び込み、知ることから始める。
そんな梶山さんが協力隊の活動の中で出会ったのが、運命の「あおさ」でした。

新上五島のあおさ協力隊活動の中で出会った「あおさ」
地域おこし協力隊としてのミッションは、水産加工品の付加価値向上や販路開拓、観光資源を活用した取り組み、海藻養殖の研究など。
長崎大学なども関わりながら海藻の研究も行われていました。
ヒジキやワカメなど、いくつか海藻を試す中で、養殖から収穫までできたのがあおさでした。
そろそろ任期後を考えなければならない時期になり、「就職するのか、それとも独立するのか」と考え始めます。
そのとき、梶山さんの中に残ったのがあおさだったのです。
「ずっと研究していたので、周りの人とも話がしやすかったですし、熱もそこにあったんですよね。全然違う分野に一から就職するより、自分が熱を持ってやってきたあおさを、そのまま続ける方がいいなと思ったんです」
活動を重ねる中で出会った「あおさ」が、自分のなりわいになる大切なものになったのです。現在SNSなどで使っている「あおさ王子」という名前も、この頃の出会いから生まれたもの。
養殖をサポートしてくれていた水産関係者が冗談で「あおさ王子」と呼んでくれていたことから、創業後、そのまま名前として使うようになったそうです。
美味しいあおさを作り上げるまでの試行錯誤の時間
あおさの道を進むことに決めた梶山さん。
ここから、自分のあおさを商品として届けていくための試行錯誤が本格的に始まります。 あおさの美味しさを決めるのは、海から収穫してきたその後です。
「乾燥させるタイミングもあるし、乾燥したあと、どれくらい寝かせて袋詰めするかにもタイミングがあるんです。香りが出たり、美味しく食べられたりするタイミングがある」
気温、湿度、天候。
その日の環境によって状態は変わるため、「何時間置いて、何時間乾燥させれば完成」という単純なものではありません。
そのやり方を、誰かに教えてもらったわけでもありませんでした。
「ずっと失敗して。何十キロも捨てましたもんね」
「なんか美味しくないな」と感じれば、商品にはできないのでせっかく愛情を込め育てたあおさを捨てる。もう、苦痛でしたね」
それでもあきらめずに試し続け、ひとつの形が見えてくるまでに約半年。
「海に網を張っていれば勝手にできるんでしょう、みたいに言う人もいるんです。畑だって“植えればできるんでしょ”って言われることがありますよね。でも、そこにはその人のやり方とか、独学で勉強してきた時間とか、スキルがある」
その見えない時間こそが、ものの価値につながっていくのではないかと言います。
目の前にある一袋のあおさ。
その中には、新上五島の海だけではなく、何度も失敗し、考え、手を動かしてきた時間まで詰まっています。

貴重なあおさの加工場
梶山さんがオリジナルで作った、あおさを洗う機械。あおさは「洗う」工程がとても大切なのだそうまだない仕事を、この島でつくっていく
実は、あおさを販売することは新上五島ではほとんどありませんでした。
天然のあおさを地元の人が採り、味噌汁などに入れて食べる習慣はあったけれど、それを養殖し、商品として販売することは一般的ではなかったそうです。
「周りからは、やめろ、って言われましたね。そんなの売れるのか、って」
なのでもちろん、あおさの既存の販売ルートはありませんでした。
誰が買ってくれるのか。どうやって売っていくのか。
その一つひとつを、自分で探し作っていきました。それがようやく形になってきたのです。
けれど、梶山さんがつくろうとしているのは、自分一人だけの仕事ではありません。
「やり方が確立できたら、自分の手を離れてもいいかなと思っているんです。人に教えていきたいですね」
あおさは、天然の種を利用できるため、種そのものを仕入れる必要がありません。網と杭があり、地域に合った育て方を見つけられれば、新しい仕事になる可能性があります。だからこそ、梶山さんはまず「新上五島でのあおさ」を確立したいと考えています。
これから生産する人を増やし、自分は加工や商品づくり、そして販売経路をもっと広げてあおさ王国を作りたい。
島の可能性にかけて作った仕事。
そしてその仕事を誰かが選べる仕事のひとつにしていく。
やはり王子の考え方は素敵です。

新上五島のスーパーで梶山さんのあおさの商品が販売されていましたあおさ王子からのメッセージ「挑戦しないことが、そもそもの失敗」
「やりたいなら、やった方がいいと思います。思い切って飛び込むのもありかなって」
そしてあおさ王子はこんなメッセージもくれました。
「失敗も前進だと思っているんです。挑戦しないことが、そもそも失敗というか。人生は短いし、あっという間なので、挑戦できるうちに挑戦した方がいいんじゃないかなと思います」
福岡での安定した暮らしを離れ、家族5人で海を渡った梶山さん。今では、家族で毎日同じ時間に晩ごはんを囲めることにも幸せを感じているといいます。
「家族で毎日、家で晩ごはんを同じ時間に食べられる。それだけでも幸せだなと思います」
島へ移住したことが成功だったのか、失敗だったのか。その答えは、まだわからない。それでも、挑戦したからこそ出会えた暮らしと仕事があります。
これからも新上五島の美しい海で王子の挑戦は続きます。

あおさの養殖場に立つ梶山さん失敗は前進!
今回梶山さんのお話を聞いて、特に心に残ったのは「あおさは生きている」ということでした。
海を泳いできた小さなあおさの種は、自分に合う場所を見つけ、そこに根を下ろして育っていく。
外からやってきた人がその土地で暮らし、地域の人や文化と混ざり合いながら、その場所に根を張っていく。そして想像していなかった景色を作り出していく。
最初から自分に合う場所や、進む道が分かっているわけではないのかもしれません。それでも飛び込んでみることで、思いがけないものに出会い、そこから自分の道が生まれていく。
「挑戦しないことが、そもそもの失敗」
あおさと梶山さんの生き方を重ねながら、この言葉に背中を押された取材となりました。

自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト
地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
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