
「飲み会で交わした約束も必ず実行する」西海市雪浦地区から学ぶ、地域との信頼関係の育て方
2026年10月更新
現在募集中の地域おこし協力隊情報
長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。
地域おこし協力隊が活動を進めるうえで、避けて通れないのが地域の人たちとの関係づくりです。
地域に知り合いがほとんどいない状態で着任した隊員は、どのように地域へ入っていけばよいのでしょうか。また、地域側は新しくやって来た隊員と住民をどのようにつなげれば良いでしょうか。
令和8年度第1回地域おこし協力隊研修会では「地域とともに活動する土台――信頼関係づくり」をテーマに、長崎県西海市大瀬戸町雪浦(おおせとちょうゆきのうら)地区を訪れました。
座談会の会場は、地域内外の人が集まる“雪浦ゲストハウス森田屋”。ここで、西海市地域おこし協力隊の山下憲昭隊員と、NPO法人雪浦あんばんね代表の渡辺督郎さんに、隊員と地域をつなぐ橋渡しや、信頼関係の育て方について伺いました。
<登壇者のプロフィール>
渡辺 督郎(わたなべ とくろう)さん
NPO法人雪浦あんばんね代表
雪浦地区出身。JICA海外協力隊としてソロモン諸島に赴任したほか、企画調査員としてフィジーでも活動。帰国後は雪浦地区の地域づくりに携わり、まち歩きイベント「雪浦ウィーク」をはじめ、交流人口の拡大や移住促進、地域資源を生かしたさまざまな活動に取り組んでいる。山下 憲昭(やました のりあき)さん
2023年9月〜 西海市地域おこし協力隊
雪浦地区の活性化と、西海市への観光客誘致を主なミッションとして活動。雪浦ゲストハウス森田屋を活動拠点の一つとし、宿泊者の受け入れにも取り組んでいる。インタビュアー:倉林 実央(くらばやし みお)
2020年8月〜2022年8月 島原市地域おこし協力隊 NCN理事
地域側はきっかけをつくり、入る側は挨拶と酒を囲む

地域住民より「雪浦地区の地域づくりをしてほしい」の声を受けUターンし市議会議員も経験した渡辺さん倉林:山下さんが雪浦地区で隊員活動を始める際、渡辺さんはどのように地域の方々との間をつないだのでしょうか?
渡辺:山下さんのことは普段「山ちゃん」と呼んでいるので、今日も山ちゃんと呼びますね。まずは、NPO法人雪浦あんばんねや株式会社ゆきのうらの仲間に「地域おこし協力隊として山ちゃんが仲間になることになりました」と、LINEやメッセンジャーを通じて紹介しました。また、雪浦地区の区長さんたちが集まる会議も毎月行われているので、そこでも山ちゃんが着任することを伝えました。山ちゃんが住む地区の区長さんは私の同級生だったので、「これから地域に入るので、よろしくお願いします」と直接お願いしました。
倉林:山下さんは、紹介を受けた後、地域の方々とどのように関係を築いていきましたか?
山下:地区の会議に呼んでいただいて、皆さんの前で挨拶をするところから始まりました。区長さんの家に呼んでいただき、近所の方々と食事やお酒を囲む機会もありました。渡辺さんに最初のきっかけをつくっていただいたことは、とても大きかったと思います。
毎週金曜日の居酒屋が顔の見える関係をつくった
山下さんが地域の人たちと最も多く出会った場所が、座談会の会場にもなった雪浦ゲストハウス森田屋です。森田屋では毎週金曜日、地域の人や宿泊者が集まる“地域交流居酒屋”が開かれています。
倉林:地域交流居酒屋では、どのように地域の方々と交流していたのでしょうか?
山下:最初の頃は、キッチンで料理を運んだり、洗い物をしたりすることが多かったですね。その合間に来ている方々と話をしました。毎週繰り返し顔を合わせるので、少しずつ知り合いが増えていきます。地域のいろいろな集まりや飲み会も森田屋で開かれていて、ありがたいくらい多くの方と交流させてもらいました。地域の方との距離が一番縮まったのは、やはり金曜日の居酒屋だったと思います。
倉林:“地域交流居酒屋”は、どのような目的で始めたのですか?
渡辺:森田屋は宿泊施設なので、そのままだと地域の人が中に入る機会があまりありません。雪浦には気軽に集まれる居酒屋もなかったので、「週に一度くらい居酒屋を開けば、地域の人も来るのではないか」と考えました。地域の人と旅人が出会う場所にしたかったんです。海外から一人旅のお客さんが来たときには、グループLINEで「今日はシンガポールからお客さんが来ているよ」と知らせることもあります。そうすると地域の人たちが集まってきて、英語や雪浦弁を交えながら交流が始まります。

山下隊員がセッティングを行い、研修会後の意見交換会をゲストハウス森田屋で開いた信頼を損なわないための“約束を実行する力”
地域で信頼を築くことと同じくらい重要なのが、一度築いた信頼を損なわないことです。
倉林:地域に入る人が信頼を損なわないために、気をつけた方がよいことはありますか?
渡辺:JICA海外協力隊として海外で活動した経験から言えば、海外では相手が遅れるのは当たり前なので寛容さが大切です。一方で、自分がした約束は守らなければなりません。森田屋の金曜日の集まりでは、飲みながら「次はこんなことをしよう」「あれをやってみよう」という話がたくさん出ます。たとえ飲み会で交わした話でも、そこで約束したことは必ず実行する。これは非常に肝ですね。
山下:私も、言ったことを実行するのは大切だと思います。それと、日頃の挨拶ですね。知らない方であっても、雪浦で会った方には自分から挨拶をします。「誰だったかな」という反応をされたときには、自分が何者なのかをきちんと説明します。そうすると「ああ、山下さんね」と分かってもらえるようになります。
会話から生まれたアイデアを実現させる

地域交流居酒屋で生まれたアイデアからイベントが実現したと話す古賀隊員前述の渡辺さんからの話にもあったように、森田屋の“地域交流居酒屋”では、雑談のなかから数多くの企画が生まれてきました。マルシェや健康教室、星空コンサート、芸術祭、森のようちえん、地域食堂。規模の大小を問わず、「次はこれをやろう」という話を、その場限りにせず形にしてきました。
研修会に参加していた西海市の音浴博物館で活動する古賀タケル隊員からは、森田屋での会話をきっかけに実現した、桜の公園での音楽イベントも紹介されました。
古賀:地域の方から「近くに桜がきれいな公園があるのに、誰も来ていない」という話が出たんです。そこで「音楽を流したらいいですね」「では、本当にやりましょう」と話が進み、実際にレコードを流すコンサートを開催しました。地域の方からも「やってくれてありがとう」と言ってもらえました。
飲み会でアイデアが出たとき、その場で関係者にLINEを送り、翌日には検討が始まったこともあります。記憶が新しいうちに担当者へ伝え、次の行動につなげることが大切です。アイデアを“面白い話”で終わらせない伝統が、雪浦には根づいています。
渡辺:関係人口を増やすためには、人が関わるための「関係所」をつくることが大切だと言われます。こうした拠点があるかどうか、みんなが集まって話せる場所があるかどうかは、とても大きいと思います。飲みながらでも、食事をしながらでも、いろいろな意見が出てくる場をつくることが大事です。
無理に地域全体を巻き込まず「動ける人が動く」

座談会では約30人の現役隊員が森田屋に集まった座談会の後半では、参加した現役隊員から質問が寄せられました。
隊員:イベントを続けていると「イベント疲れ」することがありますが、イベントを長く続けるために、意識していることはありますか?
渡辺:疲れたときは休めばいいと思っています。参加を強制することはありません。雪浦ウィークでも、「今年は休みます」という人はいます。それでいいんです。長く続けていると、参加する人も少しずつ入れ替わります。無理をしないことが大切です。その時に動く人、動ける人がやる。
隊員:新しい企画に地域の有力者などから反対意見が出て、当初の目的から外れてしまった場合はどうすればよいでしょうか?
渡辺:雪浦でもすべての人から賛同が得られたわけではありません。地域の役員は定期的に交代しますし、その時々で協力が得られる人が変わります。だから私たちは、基本的に「この指とまれ方式」で活動していて、趣旨に賛同した人が集まって進めます。
外国人との交流も“雪浦弁”で楽しむ
雪浦ゲストハウス森田屋には、国内だけでなく海外からも旅行者が訪れます。現役隊員からは、海外からの旅行客との交流方法についても質問がありました。
隊員:地域の人が海外からの宿泊者との交流に参加できる雰囲気づくりは、どうやって実現させているのか教えてください。
渡辺:英語を話してみたい人が多いんですよね。通じるかどうかは横に置いて、雪浦弁で話す人もいます。今はスマートフォンもありますし、片言でも交流できます。海外から来る人と繰り返し接するうちに、少しずつ慣れていくのだと思います。楽しんで交流していますよ。
なお、地域交流居酒屋には、お酒を飲まない人も参加しています。酒が目的ではなく、地域の内外から来た人が同じ場所で時間を過ごすことが、交流の大事なポイントとなっています。
地域との接点を一つずつ増やしていく

山下隊員のアテンドで行われた雪浦地区散策座談会の最後に、二人から現役隊員へメッセージが送られました。
渡辺:私が雪浦の地域づくりにこだわっている背景には、JICA海外協力隊としてソロモン諸島の村で暮らした経験があります。自給自足に近い暮らしをしている人たちを見て、日本人は本当に豊かなのだろうかと考えるようになりました。雪浦を持続可能で、住んでいる人が幸福を感じられる地域にしたいです。活動を続けていると、周りから「これをやらないか」と新しい話が次々に来ます。休む暇がないくらいですが、人生は面白いです。皆さんも楽しくやりましょう。
山下:地域の方や行政の方と本音で話せる関係をつくることが大切です。私は市役所にだいたい週に1回用事がなくても顔を出しています。まずは人との接点を持ち、挨拶や短い会話を続けてみてください。こうした研修にも参加し、隊員同士のネットワークを広げてほしいと思います。私も任期の節目を迎えますが、西海市はまだまだ認知度が低い地域だと感じています。今後は森田屋を拠点に、地域の人と交流できるようなツアーにも取り組みたいと思っています。
地域との信頼関係は、度重なる顔合わせと約束の実現
座談会を通して、地域に入る側と迎える側の双方が歩み寄り、顔の見える関係を積み重ねることが、隊員が地域活動する土台になると教わりました。
また、座談会前に行った雪浦地区でのフィールドワークでは、山下隊員が事前に地域のお店に相談し、隊員と話をする時間を設けていただきました。地域との信頼関係が垣間見えました。
ふとした会話から生まれた約束も、その場限りにせず実行する。そうした小さな積み重ねが周囲との信頼関係を育み、それを土台に、雪浦地区の人と地域外から訪れる人、そして隊員とのつながりが少しずつ広がっているのだと思います。
自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト
地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
弊社では、着任後のミスマッチを防ぐため、自治体に伴走して募集ミッションや受け入れ環境の設計からサポートしています。
現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。
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