
「誰とやるか」を大切に ご縁から始まる仕事と暮らし
2026年10月更新
現在募集中の地域おこし協力隊情報
長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。
18歳で故郷・長崎県新上五島町を離れ、技術者として全国各地で働いてきた鉄川吉康 (てつかわよしやす)さん。
30代後半になり、「今戻らなかったら、もう島には戻らないかもしれない」という思いから、地域おこし協力隊として故郷へUターンしました。
協力隊として関わった農産物直売所では、畑へ足を運び、一人ひとりの話に耳を傾けながら、島の人たちとの関係を築いてきました。
鉄川さんが大切にしているのは、出会った人とのご縁を、その場限りにしないこと。相手の思いや暮らしを知り、できることを考え、関わり続ける。その積み重ねが野菜の集荷となり、協力隊卒業後の「千良縁(せんりょうえん)」という仕事へ、そして月ノ浦地区での宿づくりへとつながっています。
「何をやるかだけじゃなく、誰とやるかが大切」
人とのご縁は、待っているだけでつながっていくものではなく、目の前の人を大切にすることで少しずつ育っていくものなのかもしれません。鉄川さんが島の人たちとどう向き合い、ご縁を大切にしながら自分の仕事や暮らしをつくってきたのか。その歩みを伺いました。
<鉄川吉康(てつかわよしやす)さんプロフィール>
1983年生まれ、長崎県新上五島町出身
2022年5月~2025年4月 新上五島町地域おこし協力隊
2025年の任期満了後、個人事業として「千良縁」の屋号で野菜の集荷や販売、草刈りなど、島の人たちの「ちょっと困った」に寄り添う活動を開始。
2026年5月 宿「一棟貸し 月ノ浦」をオープン
「今戻らなかったら、もう戻らない」故郷・新上五島へ
新上五島町で生まれ育った鉄川さん。18歳で島を離れ、福岡県の大学へ進学しました。
卒業後は技術者として働き、全国各地でさまざまな仕事を経験します。そんな鉄川さんが故郷へ戻ることを考えたのは、30代後半の頃。仕事が一区切りしたタイミングで、これからのことを考えました。
「40歳を超えて、島に一回も戻ってなかったら、多分もう戻らないなって」
18歳で島を出てから、長く島の外で暮らしてきた鉄川さん。40歳を前に、故郷へ戻ることを考えるようになります。
そんなときに見つけたのが、新上五島町の地域おこし協力隊の募集でした。当時はコロナ禍で、面接はオンライン。そして鉄川さんは、約20年ぶりに故郷・新上五島町へ戻ることになります。
生まれ育った島へ、今度は地域おこし協力隊として。ここから鉄川さんと、島の人たちとの新しい関わりが始まっていきます。

鉄川さんは島の直売所が大好き足を運び、話を聞く。直売所から始まったご縁
鉄川さんの地域おこし協力隊としてのミッションは、農産物直売所の活性化でした。
着任前に聞いていたのは、車がなく、野菜を直売所まで運べない人のところへ行き、野菜を集荷するという仕事。ところが実際に地域へ入ってみると、車を運転できなくなった人は、すでに野菜づくり自体をやめているなど、少し状況が違いました。そこで鉄川さんは、まず直売所に野菜を出している人たちと話すことから始めます。
掃除を手伝ったり、どんな野菜をつくっているのか聞いたり。そして自分で地域を回り、畑で作業をしている人を見つけては、直売所に野菜を出してみませんか?と声をかけました。その数は50〜60人ほど。
島では、自分たちが食べるために野菜をつくり、島外に暮らす子どもや家族へ送り、それでも余ればご近所へお裾分けする。そんな風に、野菜が人から人へ渡っていく風景があります。
まずは自分たちが食べる分。そして、子どもたちや家族へ送る分。それでも余った野菜があれば直売所へ。
余った野菜が少しでも収入になれば、家族へ野菜を送る送料の足しにもなります。また、自分で直売所まで運ぶ負担が減ることで、畑仕事を楽しみながら続けることにもつながっていきました。
野菜を集めるだけではなく、何度も地域へ足を運び、一人ひとりと話す。その積み重ねの中で、鉄川さんと島のおじちゃん、おばちゃんたちとの関係も少しずつ深まっていきました。
鉄川さんは隊員としての任期を終えた後も地域を回り、野菜を集めて直売所へ届けています。地域おこし協力隊から始まった活動とそこで生まれたご縁は、今も島の日常の中で続いています。


ワクワクする新上五島の直売所退任しても続いていくご縁。なんでも屋「千良縁」を立ち上げる
隊員時代に始めた、野菜の集荷。
何度も地域へ足を運び、畑を訪ね、話をする中で出会った島の人たちとの関係は、少しずつ鉄川さんの日常の一部になっていきました。そして迎えた、協力隊の卒業。
任期が終われば、これまで無料で行っていた集荷も、ガソリン代や時間を自分で負担することになります。それでも鉄川さんは、協力隊が終わったからといって、せっかく続けてきた活動を終わらせたくはありませんでした。
卒業する約1年前から、退任後も無理なく続けていくために必要なことを地域の人たちに伝え、現在も自分の仕事として野菜の集荷を続けています。そして退任後に立ち上げたのが、個人事業「千良縁」です。
その名前に込めたのは、「たくさんの、いい縁がありますように」という思い。現在は野菜の集荷や販売のほか、草刈りなど、地域で頼まれたさまざまな仕事をしています。
「まあ、なんでも屋ですね」。そう笑う鉄川さん。
誰かの困りごとを知り、自分にできることがあれば動く。一度つながった人との関係を大切にしながら、できることを少しずつ増やしてきました。
そんな鉄川さんの人との関わり方が、そのまま「千良縁」という仕事になっているように感じます。
そして、一つのご縁から、また新しいご縁へ。2026年5月には月ノ浦地区に宿「一棟貸 月ノ浦」オープンさせることになります。
月ノ浦地区のご縁から生まれた、島の日常を感じる宿

鉄川さんが2026年5月に開いた宿「一棟貸し 月ノ浦」鉄川さんが以前からやりたいと思っていたことのひとつが、宿でした。
ですが、島には空き家があっても、家財道具や仏壇が残っていたり、島を離れた家族が帰ってくる場所として残していたりと、実際に借りられる家を見つけるのは簡単ではありませんでした。
そんな中、宿へとつながるご縁が生まれたのが、新上五島町の月ノ浦地区です。
鉄川さんは野菜の集荷などで、以前から何度も月ノ浦地区へ通っていました。 野菜を受け取り、地域の人たちと話をする。そんな日々の関わりの中で、一軒の家が空くことを知ります。取り壊されるかもしれないと聞き、宿として使わせてもらえないか相談したことから、宿づくりが始まりました。
何度も月ノ浦へ通い、人と関わってきた中で巡ってきた一軒の家。 ここにも、鉄川さんが大切にしてきた人とのご縁がありました。
そして2026年5月、月ノ浦地区に宿をオープン。
宿を始めてからも、地域の人たちは何かと気にかけてくれるそうです。そんな月ノ浦の人たちの温かさも、この場所の魅力です。
鉄川さんがこの宿を通して伝えたいのは、月ノ浦だからこそ感じられる、島の本物の良さ。海のそばに家々が並び、そこには島の人たちのいつもの暮らしがあります。海を眺めたり、釣りをしたり、地域の人と言葉を交わしたり。何もしないで、ゆっくりと島の時間を過ごすのもいい。
有名な観光地を巡るだけではなく、ここで暮らす人たちの日常に触れながら、新上五島の空気や人の温かさを感じ取ってほしい。そんな思いが、この宿には込められています。
そして、この宿をきっかけに、これまで観光客があまり訪れなかった地域にも人が訪れるようになれば、地域にも少しずつ新しい動きが生まれるかもしれません。
「あそこ、最近なんか人が来てるね」。そんな小さな変化から、「うちの空き家でも何かできるかもしれない」と思う人が出てくるかもしれない。
島の中心だけではなく、周辺の集落にも少しずつ人の流れをつくっていく。鉄川さんが、人とのご縁を大切にする中で生まれた月ノ浦の宿。
ここを訪れる人と島の人、そして人と人が新しくつながる、また誰かのご縁が生まれる場所になっていくのかもしれません。


「一棟貸し 月ノ浦」ここからどんな物語が始まっていくのでしょう島が好きな人たちと、好きな島で生きていく
島へ戻ってきた鉄川さんが、改めて感じた新上五島の魅力。それは、美しい海や景色だけではありません。
「なんか、みんな楽しそうなんですよ」
畑へ行ったり、釣りをしたり、友人と話したり。年齢を重ねても、それぞれに好きなことを楽しみながら暮らしている人たちが、この島にはたくさんいます。そんな島の人たちのことを話す鉄川さんはうれしそうです。
地域の高齢化というと、どうしても課題として語られることが多いもの。ですが鉄川さんは、「年寄りばっかりなら、年寄りが動けばいい」と話します。
若い人を呼ぶことだけが、島を元気にする方法ではない。今ここで暮らしている人たちが元気に動き、それぞれの暮らしを楽しむ時間を繋げていく。
そんな人たちの姿そのものが、新上五島の魅力なのだと感じます。そして鉄川さんが大切にしているのが、誰と関わり、誰と一緒にやっていくかということ。
鉄川さんがこれから地域おこし協力隊になる人へ伝えたいことは「やりたいことは、信用できる人に言った方がいい」ということ。
地域に入れば、たくさんの人と出会います。だからといって、すべての人と無理に関わる必要はない。自分が信頼できる人との関係を大切にしながら、その人たちと一緒にできることを考えていく。
「何をやるかだけじゃなく、誰とやるかが大切だと思うんです」
直売所で出会った人たち。野菜の集荷を通してつながった人たち。そして月ノ浦地区で出会った人たち。振り返ってみると、鉄川さんが今していることのそばには、いつも人とのご縁があります。
大好きな故郷でご縁を繋げていく
最後に、鉄川さんにとって新上五島とはどんな場所なのかを聞きました。
「故郷なので、大好きな場所です。みんな楽しそうなんですよね。だから、そのまま年を取りたい場所です」
生まれ育った故郷を大切にしながら、そこで暮らす人たちと関わり、その人たちの暮らしや思いも大切にしていく。直売所から始まったつながりは、野菜の集荷へ。そして「千良縁」という仕事になり、「一棟貸し 月ノ浦」とつながっていきました。
「たくさんの、いい縁がありますように」。そんな願いを込めて名付けた「千良縁」。
島が好きな人たちと、好きな島で暮らしながら、今あるご縁を大切にする。 そして、そのご縁からまた新しいつながりが生まれていく。
鉄川さんの新上五島での暮らしは、これからもそんな風に続いていきます。

宿の目の前に広がる月ノ浦の景色ご縁を大切に
今回の取材で特に印象に残ったのは、鉄川さんが島の人たちのことを、とても嬉しそうに話していたことでした。
畑を楽しむ人、家族へ野菜を送る人、年齢を重ねても好きなことを楽しんでいる人。そんな一人ひとりの姿を大切に見ていることが、話の端々から伝わってきました。
直売所で人と出会い、何度も足を運び、話を聞く。そこから野菜の集荷が始まり、「千良縁」という仕事になり、月ノ浦の宿へとつながっていく。
鉄川さんのお話を聞いていると、ご縁は出会って終わりではなく、大切に育てていくものなのだと感じます。
今あるご縁を大切にすることが、また次のご縁へとつながっていく。私自身も、出会った人とのご縁を大切にしていきたい。そう思えた鉄川さんの話でした。
自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト
地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
弊社では、着任後のミスマッチを防ぐため、自治体に伴走して募集ミッションや受け入れ環境の設計からサポートしています。
現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。
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