
退任後は大学院へ進学。学びの先に見据える地域への恩返し
2026年10月更新
現在募集中の地域おこし協力隊情報
長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。
長崎県諫早市の初代「地域おこし協力隊」として、SNSでの情報発信や体験イベントの企画を通して、まちの魅力を掘り起こしてきた菊山達也(きくやまたつや)さん。
2024年に3年7ヶ月の任期を終えた彼が次なるステージに選んだのは、京都にある大学院でした。協力隊として地域の内側から見つめた経験は、菊山さんの目にどう映り、現在へと繋がっているのでしょうか。任期後の暮らし、そして地域への思いを伺いました。
<菊山達也さんプロフィール>
福岡県北九州市出身。青年海外協力隊としてアフリカ・ウガンダで活動後、コロナ禍で任期を短縮して帰国。その後、自身の新たな活動の場として長崎県諫早市を選ぶ。2020年9月〜2024年3月 諫早市地域おこし協力隊として活動。市の初代隊員として、移住定住促進をミッションにSNSでの情報発信や体験コンテンツ造成などに尽力。在任中に旅行業の資格を取得し起業
2024年4月 京都にある大学院に進学。経営学や観光について学びを深めながら諫早のイベントに携わるなど、地域との関係を続けている
偶然が導いた諫早との出会い
――諫早市で初めての地域おこし協力隊だったそうですね。どのような経緯で諫早に?
(青年海外協力隊の活動で)アフリカにいるときから、次は日本の地域で働きたいなと考えていました。その選択肢の一つが地域おこし協力隊だったんです。もともと友人が島原半島に住んでいて、遊びに行ったことがありました。朝、港から汽笛が聞こえるのがすごくいいなと思って、「海の近くに住みたい」という思いがあったんです。
福岡から島原へ車で向かう道中、有明海沿いの自然がだんだん豊かになっていくグラデーションが印象的で。ちょうど夕暮れ時でキラキラした海を見ながら走った先に諫早がありました。そんな風に何度か行く機会があった諫早市が協力隊を募集しているのを見つけて、タイミングも合って応募を決めました。

日本一の干満差を誇る有明海。豊かな自然を有している諫早市――市で初の協力隊ということで、戸惑いなどはありませんでしたか?
初めてのことにも抵抗がないタイプなので、不安はなかったですね。むしろ、面白いことがしたいという気持ちが強かったです。役所なのでもう少し硬いルールがあるかと思っていたんですが、自由に活動させてもらえたと思っています。あとこれは任期中に感じたことですが、公的な立場で地域に入っていける「地域おこし協力隊」という肩書きは、すごくメリットだと感じました。
任期中はSNS発信や「諫早ならでは」の体験づくりに奔走
――協力隊では、主にどのような活動をされていたのですか?
ミッションは「移住定住の推進」でした。まずは諫早というまちを知ってもらわないと選択肢にも入らない。そう考えて、SNSでの情報発信には特に力を入れました。毎日更新するために、日中は写真を撮りに行ったり、地域の会合に顔を出したり。初代隊員ということで市民の方も興味を持ってくれて、大学の授業や青年会議所など、本当に色々な場所に呼んでいただきました。

協力隊時代はイベントでの窓口対応にも尽力した――公が認めた「協力隊」という肩書も安心感を与えたのかもしれませんね。任期中で特に印象に残っていることはありますか?
諫早の人たちって、よく「この地域には何もない」って言うんですよ。でも、自分がSNSで発信を続けるうちに、「あそこに行ったよ」「そんな場所があるんだね」と声をかけてくれる人が増えてきて。そういう話を聞くと、発信を続けてきて良かったなと、やった甲斐を感じましたね。実際、僕が着任した当初は年間10件ほどだった移住相談も、今では50件近くまで増えていると聞いています。
――SNSでの情報発信以外にはどんな活動を?
情報発信だけでなく、「諫早にあるものだけを使った体験」も企画しました。例えば、市の中心部にある天祐寺(てんゆうじ)さんで座禅会を開いたり、イノシシなどを解体する施設の方と協力して狩猟体験ツアーを実施したり。ハンターさんと一緒に狩場を巡り、イノシシの爪痕などを見ながら、最後にジビエのバーベキューを味わうんです。こうした活動を通して、地元の方からも「諫早にこんな場所があったんだ」と言ってもらえることがありました。

老若男女が集まった座禅会――ご自身で会社も設立されたとか。
任期2年目に「国内旅行業務取扱管理者」の資格を取得して、旅行業を始めました。外の人に諫早へ来てもらうだけでなく、地元の人にも市の魅力を体験してもらえたら、という思いがあったからです。その会社を通して、先ほどの狩猟体験ツアーなどを企画・販売していました。

狩猟現場のリアルな雰囲気を味わうことができる体験ツアー――どれも諫早ならではの体験ですね。菊山さんが諫早を離れた後も、体験は続いているのですか?
諫早市内にある酒蔵・杵の川さんと一緒に始めた「酒季折々」は四季を味わう酒造り体験で、京都に移った今でも運営に関わっています。春に田植え、秋に稲刈り、そして冬に仕込みの様子を見学するという年3回のイベントです。自分たちが収穫したお米で仕込まれたお酒が、春ごろに自宅へ届くという企画で、今年で4年目になります。お酒好きな方はもちろん、親子連れで参加して「初めて田植えを体験できた」と喜んでくれることもありました。

酒造りを田植えから学ぶことができる「酒季折々」「地域の中小企業をもっと元気に」経営を学ぶため大学院進学を決断
――任期後は大学院へ進学されています。大きな決断だったと思いますが、どのような心境の変化があったのでしょうか。
活動の中で「諫早の経済って、中小企業の皆さんがすごく頑張って支えているんだな」と強く感じました。都市部だと大企業があって、その下請けがあって経済が回っているというイメージでしたが、諫早では地域の中小企業がすごく活発に動いている。地域の企業の方々と関わる中で、「地域の中小企業がもっと元気になれば、地域に雇用が生まれて、もっとまちが良くなっていくんじゃないか」って思うようになったんです。
そのために何かお手伝いがしたい。でも、自分には経営の知識が足りない。それなら、ちゃんと体系的に学んでみよう、と。それが大学院進学を考えた理由です。もちろん諫早に残ることも考えましたし、そのつもりでもありました。でも、まずは一度外に出て専門的な知識を身につけた方が、もっと説得力を持って地域に関われるんじゃないかと思ったんです。
――京都にある大学院を選んだ理由は?
今学んでいるのは、いわゆるMBA(経営学修士)が取得できる大学院です。観光に特化したコースがあったことが決め手で選びました。協力隊時代に旅行業の資格を取って、体験ツアーなどを企画していたこともあり、関係人口や交流人口を考える上で「観光」は切り離せないテーマだと感じていたんです。外から人やお金を呼び込む仕組みを、日本随一の観光地で学んでみたいと思いました。
離れたからこそ感じる諫早の魅力。大学院卒業後も「九州に戻りたい」
――実際に「観光地・京都」で暮らしてみて、いかがですか?
正直に言うと、今まで住んだ場所で一番生活しづらいです(笑)。夏は40度近くまで暑くなるし、道は狭くて運転しづらい。大学まで数キロの距離をバスで移動するにしても、1時間くらいかかることもあります。観光客としては楽しいまちですが、住民の目線になると大変なことも多くて。でも、スーパーに行くと諫早産や島原産の野菜が並んでいるんです。長崎の食材が、遠く離れた京都の食卓を支えているんだなと実感しますね。離れたからこそ、改めて諫早の暮らしやすさや食の豊かさを感じています。

京都での週末は寺めぐりを楽しむという菊山さん――大学院卒業後の進路は考えていますか?
まずは(中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う)中小企業診断士の資格を取って、経営の課題を抱える地域企業のアドバイザーのような仕事ができたらと考えています。そして、休眠状態になっている旅行業も再開したいですね。諫早は有明海、大村湾、橘湾と三つの海に面している食材の宝庫です。その土地で獲れたものを、その土地で消費するのが一番だと思いますし、諫早でしかできない体験プランがあればと思います。
――新天地として考えている場所は?
卒業後は九州に戻ってきたいと思っています。それが諫早なのかはまだ分かりませんが、協力隊としてお世話になった諫早には、何かしらの形で恩返しをしていきたい。本当に諫早が気に入っていますし、暮らしやすいし、人もいいですから。
学びを深めた後の新たなチャレンジに期待
初代隊員として、手探りの中から諫早の魅力を掘り起こし、多くの人と地域を繋いできた菊山さん。その活動の中で芽生えた「もっと地域のために」という強い思いが、彼を学びの道へと突き動かしました。物理的な距離は離れても、その視線は常にお世話になった諫早へと注がれています。京都での学びという新たな武器を手に、彼が故郷・九州でどのような未来を描いていくのか、その挑戦はまだ始まったばかりです。
自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト
地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
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現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。
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