2026年06月28日

仕事は一つに絞らなくてもいい 諫早で見つけた「好き」を重ねる生業

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2026年10月更新

現在募集中の地域おこし協力隊情報

長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。

総合案内所の目の前にある店舗
総合案内所の目の前にある店舗

長崎県の諫早市(いさはやし)干拓エリアにある“干拓の里”。園内には遊具があり、ポニーの乗馬体験もできることから、親子連れを中心に長年親しまれてきた場所です。その入り口からほど近い場所に、2026年4月、大きくて食べ応えがある「アメリカンクッキー」を中心に販売するお店“025dept(レニコデパートメント)”が誕生しました。

お店を開いたのは、諫早市地域おこし協力隊OGの下崎(しもざき)レイナさん。埼玉県から諫早市へ移住し、2022年10月から2025年9月まで、山茶花(さざんか)高原ピクニックパーク・ハーブ園の活性化マネージャーとして活動していました。

なぜ諫早市を選び、隊員になったのか。退任後も諫早市に残り、自分のお店を開くことを選んだ理由とは何か。下崎さんに、隊員時代の活動から“025dept”オープンまでの歩み、そしてこれからの展望についてお聞きしました。

<下崎レイナさんプロフィール>

埼玉県出身。
2022年10月〜2025年9月 諫早市地域おこし協力隊 山茶花高原ピクニックパーク・ハーブ園活性化マネージャーとして活動
2026年4月 干拓の里に“025dept”をオープン

テレビでたまたま知った地域おこし協力隊制度 「ミッションが面白そうだった」と諫早へ

着任後は地域での収穫作業も体験
着任後は地域での収穫作業も体験

諫早市に来る前、下崎さんは埼玉県で保育園の調理師として働きながら、デザインの仕事にも取り組んでいました。

以前、兵庫県・淡路島にある友人の祖父の家を訪ねたときに、海と稲穂が広がる美しい景色に出会いました。その風景が心に残り、“いつか海のそばで暮らしてみたい”という思いを、漠然と持つようになったといいます。

そんななか、テレビで地域おこし協力隊という制度の存在を知りました。地方に移住し、仕事として地域に関われることに魅力を感じ、募集情報を定期的に見るように。そこで目に留まったのが、諫早市の“山茶花高原ピクニックパーク活性化マネージャー”の募集でした。

「ミッションが面白そうだったので応募しました。家族や友人と離れる不安はありましたが、受かったなら行くしかないと思いました」

採用面接で初めて訪れた諫早市は、想像していたよりも暮らしやすそうな街と感じたそうです。

「もっと田舎を想像していたんですけど、意外と都会だなと思いました。ここなら暮らせそうだなと感じました」

こうして下崎さんは、2022年10月、隊員としての活動をスタートさせました。

さまざまな企画に挑戦した現役時代 「あじさい花手水」イベントで手応え

下崎さんが活動していたのは、諫早市小長井町にある山茶花高原ピクニックパーク・ハーブ園です。

1、2年目はほとんど毎日、諫早市役所・小長井(こながい)支所に立ち寄ってから、公用車で山茶花高原ピクニックパークへ向かう生活を送っていました。活動内容は、イベントの企画・運営や、施設の魅力発信です。

山茶花高原の好きなスポットは雲仙岳と有明海が見渡せる風の丘ゾーン
山茶花高原の好きなスポットは雲仙岳と有明海が見渡せる風の丘ゾーン

なかでも印象に残っているのが、“あじさい花手水(はなちょうず)”だと下崎さんは話します。
山茶花高原ピクニックパークは、梅雨時期になると霧に包まれることが多く、来園者が少ないことが課題でした。
そこで、山茶花高原ピクニックパークの理事長があじさいを活用した花手水を企画。下崎さんは、ポスターやチラシ、イベント限定のクッキーの制作や、ワークショップの企画を行いました。
さまざまな準備をした結果、多くのお客さんが訪れ、園内がにぎわったといいます。

「梅雨の時期はどうしても閑散期になりがちでした。でも、イベントをするとたくさんのお客さんが来てくれて、すごくうれしかったです」

そのほかにも、クラウドファンディングに挑戦してアウトドアイベントを開催するなど、さまざまな企画に取り組みました。

下崎さんは、隊員時代を振り返ってこう話します。

「隊員のときは、自由に動かせてもらえました。やりたいことをやらせてもらえたので、諫早に来てから“やりたいことは全部チャレンジしよう”と思えるようになりました」

行政にも背中を押され地域に残り起業を決断

助け合った諫早市の隊員仲間とは今でも定期的に集まる
助け合った諫早市の隊員仲間とは今でも定期的に集まる

3年目に入ると、退任後の暮らしや働き方を考える時期がやってきます。下崎さんが選んだのは、地元に戻ることではなく、諫早市に残ることでした。

「諫早市は居心地が良かったので、地元に帰る理由が浮かばなかったです」

地域での暮らしに馴染んでいたことに加え、活動中のサポートの手厚さも、諫早に残る大きな理由になりました。

「隊員だったときに、のびのび活動させてもらえたことが大きかったです。意見やアイデアを交わしてやらせてもらえたので、これからも諫早でチャレンジしていきたいと思いました。起業支援金も使えるので、諫早市に残って挑戦し続けることを選びました」

退任後に向けて下崎さんが準備を始めたのが、以前からやってみたいことの一つだった“アメリカンクッキーのお店を開くこと”です。

山茶花高原ピクニックパークや公民館などでアメリカンクッキーの試作を行い、市役所の人たちに食べてもらいながら、味や具材について感想をもらうこともありました。

並行して店舗探しも行っていました。当初は、活動していた小長井エリアを中心に店舗を探していましたが、なかなか条件に合う物件には出会えません。退任後は一息つき、3月から再び店舗探しを始めたたところ、小長井支所長から“干拓の里の園内に空き店舗があったよ。見てきたら?”と声をかけられます。その一言が、“025dept”オープンへ向けた大きな転機になりました。

やりたいことを全部やる 駆けつけた隊員仲間が店舗改装をお手伝い

隊員の家族や元仕事仲間も駆けつけ改装作業
隊員の家族や元仕事仲間も駆けつけ改装作業をした

干拓の里で見つけた空き店舗は、居抜きに近い状態でした。初期投資を抑えられることに加え、市の施設内にあるため賃料も比較的抑えられることが、決め手になりました。

一方で、オープンまでの道のりは決して余裕のあるものではありませんでした。
当時、干拓の里は指定管理から市の直営へと移行するタイミングでした。そのため、改装作業を始められるのは4月に入ってから。下崎さんはオープン日を4月23日と決めていたため、4月に入ってから急ピッチで店づくりを進めることになりました。

店のコンセプトカラーは“緑と黄色”に決定し、家具を揃えたり、自分で壁紙を貼ったりと、DIYで空間をつくり上げていきました。同時期に活動していた隊員仲間や、現役隊員も駆けつけ、椅子の色を塗るなど、改装作業を手伝ってくれたそうです。

「助けがなかったら、1ヶ月でのオープンはできなかったと思います。本当にありがたかったです」

そして迎えたオープン日。テレビ取材が入り、その日のうちに放送されると、大きな反響がありました。土曜日のうちに週末分のクッキーがすべて完売し、急きょ日曜日は休業して、追加の仕込みに取り組んだこともあったそうです。

アメリカンクッキーは手のひらサイズの大きなクッキー
アメリカンクッキーは手のひらサイズの大きなクッキー
諫早の特産物を入れたものや季節限定の種類もある
諫早の特産物を入れたものや季節限定の種類もある

取材時にも、女性を中心にお客さんが次々と来店していました。
その理由の一つは、アメリカンクッキーのかわいらしいデザインと、お店全体の世界観にあるのかもしれません。カラフルで見ているだけでも楽しくなるクッキーに加え、店内には緑と黄色を基調にした内装や、細部までこだわったデザインが店中に散りばめられています。
下崎さん作成の可愛らしいマグネットやポストカードなどのグッズも販売しています。

クッキーを買いに来るだけでなく、“この空間に来てみたい”と思わせる魅力が、お店全体から感じられました。

店名の“025dept”には、下崎さん自身の思いが込められています。
「色んなジャンル、やってみたいことを全部しますよ!という思いを込めて名付けました」

クッキーショップでありながら、デザイン、イベント、地域とのつながりも含めて表現していく場所。お店全体が、まさに下崎さんのポートフォリオのような空間になっています。

仕事は一つに絞らない やりたいことを組み合わせ生業に

下崎さんは“025dept”を運営する一方で、デザイナーとしても活動しています。オンラインデザインツール「Canva(キャンバ)」の公式クリエイターにもなり、チラシや名刺などのデザインや、イラスト素材を提供しているそうです。
調理・デザイン・イベント企画・店舗運営、どれか一つに絞るのではなく、自分のやりたいことを組み合わせながら、諫早での生業をつくっています。

メニュー表も自ら作成
メニュー表も自ら作成

今後、諫早市やお店でやってみたいことを聞くと、下崎さんはこう話してくれました。「お店でイベントを開催したいです。あと、現役隊員の“チャレンジショップ”的な役割もしたいと思っています」

自分自身が隊員時代に、地域の人や市役所の人たちに支えられながら挑戦してきたからこそ、今度は自分のお店を、誰かの挑戦を後押しする場所にしたい。そんな思いが伝わってきます。

退任後も、移住相談会に参加したり、定期的に本庁や小長井支所に足を運んだりと、市役所とのつながりも続いているそうです。

下崎さんの諫早市での歩みは、“地域に残る”という選択が定住するだけではなく、自分らしい仕事と暮らしをつくっていくことでもあると感じさせてくれます。

現役隊員へのメッセージ

最後に、自分のお店を開きたい、地域に残りたいと考えている現役の隊員に向けて、メッセージをいただきました。

―― 自分のお店をオープンしたい人が現役中にやっておくべきことはありますか?

自分のやりたいことを100%ではダメだと思っていて、地域の需要と合わせることが大切だと思います。周りのやりたいことを自分のやりたいことに繋げることが大事です。

―― 現役の隊員へメッセージをどうぞ!

3年間全力で楽しんだら良いと思います!移住者としてまずは楽しんでください!

周囲に支えられた3年間 任期後は「支える側」に

手前のぬいぐるみはお店のファンの方が作ってくれたもの
手前のぬいぐるみはお店のファンの方が作ってくれたもの

取材を通して印象的だったのは、“025dept”というお店全体が、下崎さんの世界観そのものになっていることでした。

アメリカンクッキーのデザイン、店内の色づかい、家具や壁紙の雰囲気、そして店名に込めた思い。その一つひとつが重なり合って、下崎さんのニックネームを入れて“れに子さんワールド”と、思わず呼びたくなるような空間が生まれていました。

同時にこのお店は、下崎さんが諫早市の隊員として過ごした3年間の延長線上にある場所でもあると感じました。
山茶花高原ピクニックパークでの活動中、イベント企画やクラウドファンディング、アメリカンクッキーの試作など、下崎さんは自分の関心や得意なことを地域の中で形にしてきました。自由に動き、周囲に支えられながら、好きなことにたくさん挑戦できた経験があったからこそ、“この街でやりたいことは全部挑戦しよう”というマインドが育まれたのだと思います。

諫早で好きなことに挑戦してきた下崎さんが、今度は自分のお店を通じて、誰かの挑戦も後押ししていく。そんな広がりを感じさせるところに、“025dept”の大きな魅力があると感じました。

自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト

地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
弊社では、着任後のミスマッチを防ぐため、自治体に伴走して募集ミッションや受け入れ環境の設計からサポートしています。
現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。

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