2026年03月19日

昆虫の研究から草原の保全へ 奥雲仙・田代原の自然に魅了され、地元のNPO法人を継承し“保護と利用の好循環”を目指す

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2026年10月更新

現在募集中の地域おこし協力隊情報

長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。

長崎県雲仙市にある雲仙温泉の北側に、草原の広がる田代原(たしろばる)というエリアがあります。

草原には牛が放牧されており、春になると“ミヤマキリシマ”という九州の高原に咲くツツジが咲き乱れ、美しい自然と動物が共生する光景が見られます。

牛の背後に咲くピンクの花がミヤマキリシマ
牛の背後に咲くピンクの花がミヤマキリシマ

そこの保全活動を行うNPO法人の代表を引き継ぎ、ミヤマキリシマや田代原を知ってもらうために活動をしているのが、雲仙市地域おこし協力隊OBである山本哲也さんです。
退任後は雲仙市職員として働きながら、NPO法人の代表として、ミヤマキリシマの保全活動に取り組んでいます。
愛知県出身の山本さんがなぜ、雲仙市に来てここに残ることを決めたのか、地元の人が運営していたNPO法人を引き継ぐことになったのか、詳しくお聞きしました。

<山本哲也さんプロフィール>
愛知県出身。
2022年8月~2025年7月 雲仙市地域おこし協力隊として活動、ミヤマキリシマ保全などを担当
退任後は雲仙市職員として働きつつ、NPO法人奥雲仙の自然を守る会の代表として活動

昆虫から植物の研究へ

幼少期から昆虫が好きだった山本さん。特に興味を引かれたのはアリで、長野県にある信州大学の理学部で「アリとアブラムシの共生関係」について研究していました。

長崎県に来たのは、同じ研究室の先輩だった長崎大学の准教授から“ミヤマキリシマの保全活動に取り組む地域おこし協力隊が募集されるけど、どう?”と声をかけられたことがきっかけでした。
当時の山本さんは10年間アリとアブラムシの研究をしており、ちょうど何か新しいことにチャレンジしたかったため、応募し採用が決まりました。

ミヤマキリシマは九州各地の火山に自生するツツジの一種

担当ミッションは、雲仙自然コンテンツの掘り起こし・観光活用・ミヤマキリシマ保全。

ミヤマキリシマの咲く時期は4〜5月頃ですが、着任したのは8月だったので、まず雲仙を知ることから始めたと言います。雲仙の自然や山に詳しい人を紹介してもらい、登山に行くなどして雲仙エリアのことを勉強しました。

春になり、雲仙にあるミヤマキリシマの群落をたくさん巡った山本さん。巡ったなかで、特に気に入ったのが田代原でした。雲仙にある唯一の放牧草原に、自生しているミヤマキリシマが咲き乱れる光景に心奪われました。

「100年前の雲仙の山には、馬や牛の放牧によってできた草原にミヤマキリシマが咲く場所がたくさんありました。昔は、こんな美しい景色が雲仙の各地に存在していたと思うと、ここを絶対に残さなければと思いました」

そこで、田代原にあるミヤマキリシマの保全活動に取り組む“NPO法人奥雲仙の自然を守る会”が実施する、田代原の草刈り活動に毎週参加するようにしました。

「既に入会はしていましたが、田代原の自然に惚れ込んでからは積極的に活動に参加するようになりました。地域の人に認めてもらうには、泥臭いこともやるような行動力や実績づくりが大切だと思います」

それからミヤマキリシマに詳しい人と認識され、保全活動に訪れた学校や企業への講義を頼まれるようになりました。

長崎大学のフィールドワークを受け入れ、草刈りや郷土料理作りを行った
長崎大学のフィールドワークを受け入れ、草刈りや郷土料理作りを行った

また、当時は2024年の国立公園“雲仙”指定90周年が控えており、さまざまな市の記念事業が計画されていました。
そこで、10年後に迎える100周年に向け、長期的に田代原の放牧とミヤマキリシマの景観保全に取り組むことを決定し、国立公園“雲仙”指定90周年記念事業に組み込ませてもらいました。

しかし、そこで行政のルール内で物事を行う大変さに気がつきます。

「国立公園“雲仙”指定90周年記念事業は、雲仙市の事業だったので、行政の仕組みを守らなければいけないのが大変でした。公務員の経験もなければ、その勉強をしていたこともないので、それが一番の壁でしたね」

慣れない仕事をするなかでも、雲仙ミヤマキリシマ保全活用連絡協議会を立ち上げ、ミヤマキリシマ保全に関わる地域の団体を取りまとめるなどし、準備を進めていきました。

ミヤマキリシマがたくさん咲く春の田代原
ミヤマキリシマがたくさん咲く春の田代原

忙しい日々のなかでも、田代原で過ごす日常が何より幸せだったといいます。山本さんの写真フォルダには、田代原の風景写真がたくさんありました。

「今のところほとんど独り占め状態なんで、いろんな人に見てもらいたいです」

退任後は市職員と地元NPO法人の代表に

NPO法人奥雲仙の自然を守る会は20年以上田代原で活動を続けている
NPO法人奥雲仙の自然を守る会は20年以上田代原で活動を続けている

退任後も雲仙市に残った理由をお聞きすると、「田代原の風景に惚れたからです」とシンプルな答えが返ってきました。

特殊なミッションなため後任者がおらず、退任後も雲仙市職員として引き続き働くことになりました。同時に、所属していた“NPO法人奥雲仙の自然を守る会”の代表を引き継ぐことになります。
「当時の代表が高齢化を理由に、代表を退く意向だったので、引き継ぐことを申し出ました」

田代原のガイドとしてインバウンド客を受け入れたことも
田代原のガイドとしてインバウンド客を受け入れたことも

平日は市職員、休日はミヤマキリシマ周りの草刈りや企業や学校などの環境学習を受け入れなど、忙しい日常を送っています。

「将来的にここで、環境省の提示する“保護と利用の好循環(※1)”を実践して行きたいと思います。保護して環境が良くなって、それを利用する人が来て、お金を落とし、そのお金をまたここに回すという経済循環です。まだまだ進行途中ですが、田代原で保全活動をしながら実践していきたいと思います」

今後は近くにあるキャンプ場や、田代原トレイルセンターと連携しながら、一般の人に田代原を知ってもらうため、さらに活動して行きたいと語ります。

※1 自然公園法の一部を改正する法律の概要

地域おこし協力隊へのメッセージ

――地域おこし協力隊として活動する上で、最初の1年で意識したほうが良いことは?

地域の特徴を知り、色んな人に会うのが大事です。地域を知って、地域を理解することにより、自分の活動の立ち位置に気づけると思います。

――移住者が、自然環境の保全に関わることにはどんな意味があると思いますか?

自然や景観の魅力について熱意を持って伝えられる人は案外よそ者に多いのではないでしょうか。おそらくよそ者の方が地元の人が「当たり前」と思っている魅力に気づけるんだと思います。

――NPO法人を継承しましたが、隊員で事業承継を考えている人にアドバイスはありますか?

私は自然と継承する流れになりましたが、任せなければならない人材に自然となっているのが理想形かもしれません。そのためには、身を粉にして働き信頼関係を築くことが大切です。

――現役の地域おこし協力隊や隊員を目指している人にメッセージをお願いします!

自分のことの好きなことをやって幸せになってください!

「ぜひ春に田代原へ来てください!」と声を弾ませる
「ぜひ春に田代原へ来てください!」と声を弾ませる

好きな場所を守り続けるという地域との関わり方

草刈り活動の参加者に草原の貴重さについて講義する
草刈り活動の参加者に草原の貴重さについて講義する

小学生の学習では、ミヤマキリシマ以外に今まで研究していたアリについて、授業で話をしたり公園でみんなで探したりしているそうです。今までのキャリアを活かしつつ、ミヤマキリシマの研究や保全という新たな取り組みに挑戦している山本さん。

保全活動はたった3年目では終わりません。
雲仙国立公園100周年、もっと先に向けて、山本さんは地域に暮らしながら、田代原を知ってもらうため活動を続けます。

自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト

地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
弊社では、着任後のミスマッチを防ぐため、自治体に伴走して募集ミッションや受け入れ環境の設計からサポートしています。
現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。

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