2026年07月18日

地域に残る力を育てる 農業系ミッションの可能性

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2026年10月更新

現在募集中の地域おこし協力隊情報

長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。

地域おこし協力隊が担うミッションのうち、「農業系」は主要テーマのひとつ。任期中の活動が任期後の「なりわい」に直結しやすいことから、比較的定住につながりやすい分野と考えられています。

2026年春、長崎県松浦市で、メロン農家として新規就農した小吹雅斗(こぶきまさと)さん(24)も農業系ミッション経験者。「農業経験ゼロから出発し、定住・就農にまでこぎつけた僕の姿を見て、あとに続く人が出てくれば」と期待を込める小吹さんに、これまでの歩みや協力隊制度と農業系ミッションの相性などについて聞きました。

<小吹雅斗(こぶきまさと)さんプロフィール>
2001年生まれ、愛知県尾張旭市出身
2022年12月~2025年12月 松浦市地域おこし協力隊
2025年4月 任期満了後、地域に残りメロン農家として独立
趣味はバレーボール

長崎・松浦市特産のアールスメロンで勝負! 任期後に新規就業し独立

そのビニールハウスは、反対側の出入り口が小さく見えるほどの広さでした。中に入ると、大人の背丈ほどまでつるを伸ばした苗が、ずらりと並んでいます。

立体栽培(空中栽培)と呼ばれる手法により、ぶら下がった状態で育てられている松浦市特産の「アールスメロン」。網目のついた果実は高級感があふれていました。

「このハウスは50メートルの長さがありますが、少し離れた場所にあるハウスと合わせて20アールほどの面積でメロンを育てています。今年は5000本ほど植える予定。いずれ7000本まで増やしたいですね」。そう話す小吹さんは、たくましい農家の顔をしていました。

小吹さんのビニールハウス内
小吹さんのビニールハウス内。反対側の出入り口が小さく見えるほどの広さだが基本的に1人で作業を行っている

大学を3年次前期で休学 地域おこし協力隊制度と出会い着任

小吹さんは2020年春、大学に進学しました。折しも新型コロナウイルスの感染拡大によるパンデミックが始まった直後。世界中がパニックに陥るなか、入学式は開かれず、学校すら通えない日々が続きました。

思い描いていた学生生活を送れず次第に不安が募るようになり、大学3年生の2022年夏、「やりたいことをやってみよう」と、思い切って前期で休学を決めます。そして、日本各地の「お手伝い(短期アルバイト)」と「旅」を掛け合わせた人材マッチングサービスを利用し、全国を転々とする生活を始めました。

そんな中、東京の農業フェアにふと顔を出した際、地域おこし協力隊という制度を知ります。食に関心があったため「農業」というキーワードで全国の隊員募集を探したところ、メロン農家の後継者を募集していた松浦市を発見しました。

農業経験は無し。子どものころから思い描いていた職業でもありません。松浦市も「どこにあるのか分からないまち」でしたが条件を精査し応募を決断、採用が決まりました。着任時21歳。全国的に見てもダントツに若い隊員が誕生しました。

隊員着任式での小吹さん(左)
隊員着任式での小吹さん(左)

農業未経験からのスタート 地域とはバレーボールを通じ交流を深める

1年目は、地元の農協でメロン部会長を務める「師匠」のハウスを手伝う形で現場作業に従事。苗の扱いからトラクターの乗り方まで、メロン栽培の基礎を学びました。

2、3年目は、20アールのハウスを任され、師匠の指導も受けながら栽培に挑戦。インプットするべき情報の膨大さや、自然を相手にする仕事の難しさなどに悪戦苦闘しながらも、手をかけた分だけ応えてくれる農業の面白さを実感する日々を過ごしました。

私生活では、知り合いが一人もいない状態からスタートしたため当初はストレスを感じることもありましたが、中学・高校時代にバレーボール部に所属していた経験を生かし地元のバレーチームに所属し、交友関係を広げることに成功。2026年からは地元の女子中学生が所属するクラブチーム「FIORE MATSUURA(フィオーレマツウラ)」の指導者にも就任し、地域とのかかわりを深めています。

「FIORE MATSUURA」のメンバーにバレーを指導する小吹さん
「FIORE MATSUURA」のメンバーにバレーを指導する小吹さん。地域に入り込むきっかけにもなっている

「リスクをとっても挑戦する」 自分を変えるため定住・新規就農を決断

3年目、隊員としての任期満了が迫るなか、松浦市に残りメロン農家として独立するかどうかについて、実はぎりぎりまで悩んだといいます。

農業で生計を立てる難しさは、隊員活動を通じ十分に理解していました。一方で、自分を支えてくれた地域の人も頭に浮かびます。最終的に、定住・就農に踏み切った理由は「自分を変えたい」という思いでした。

「それまでの自分を振り返ると、進学などをめぐり現実から逃げ、安全な道を選択していました。任期後を見据えたとき、こう思ったんです。また逃げるのか、それでいいのか、と。考え抜いて、自分を変えるためにリスクをとっても今回こそチャレンジするべきだと考えました」

協力隊制度が、自分自身を変えるきっかけとなりました。

小吹さんが丹精込めて育てたメロン
小吹さんが丹精込めて育てたメロン

「自分のように農業系ミッション経由で定住する人が増えるとうれしい」

隊員としての活動を通じ地域に残せたものについて、小吹さんは「正直、『地域おこし』という面では活躍できた実感が無く残念」と振り返りつつ「ただ、農業系のミッションで、経験ゼロからスタートし最終的に定住という形で着地できたことは、ある意味、実績になるのかなと考えています」と話します。

リスクを承知でチャレンジする先行者が1人誕生すると、後に続く人が生まれやすいと言われます。小吹さんは「僕の姿を見て、自分もできるのではないか、と農業ミッション経由で定住する人が増えればうれしいです」と力を込めます。

今後の目標に関し、「農業できちんと生計を立てること」を掲げる小吹さん。長崎県、松浦市、JAのサポートも受けながら、経営の道しるべとなる事業計画も策定し、足場を固めています。

小吹さんのビニールハウス。「1人で黙々と作業に取り組むことも好き」と話す
小吹さんのビニールハウス。「1人で黙々と作業に取り組むことも好き」と話す

協力隊制度と相性がいい農業系ミッション

協力隊制度と、農業系ミッションとの相性について、小吹さんは「農業に関する知識や土地、技術が無い人にとっては相性がいいのでは」と分析します。

併せて、任期後の定住・なりわいづくりを考えたとき、任期中から「農業に従事する形で地域に残る」という方向性は定まっているので、その点で悩む必要がなく、隊員活動の延長線上に定住がある点も指摘しました。

一般に、隊員のミッションは情報発信や移住・定住促進、観光振興、地域コミュニティの活性化など多岐にわたりますが、総じて農業系は移住・定住につながりやすいと言えそうです。

一方で、小吹さんは、隊員がゼロから農業を学ぶ場合、3年という期間では少し時間が足りないと感じたほか、行政が隊員を採用する時点から任期後の定住・就農に向けたビジョンを持ちサポートしていくことが欠かせないのでは、と考えています。

笑顔が印象的な小吹さん。就農を応援する地域の声も多い
笑顔が印象的な小吹さん。就農を応援する地域の声も多い

小吹さんに聞きました! 現役隊員へのメッセージ

――地域活動よりも自己実現に力点を置く隊員が問題となるケースがあります

「やりたいことがあること自体は素晴らしいと思いますが、やりたいことに取り組む前提として、自分自身や、やりたいことを周囲に知ってもらうプロセスが必要だと感じます。忍耐が求められる時期もあるかもしれませんが、必要なフェーズではないでしょうか」

――農業を通じた人脈づくりの印象は?

「他のミッションに比べ、地域のより深いところに入り込むイメージがあります。農業に取り組んでいると、本当の意味で地域に根付いている人に多く出会います。その意味でも、新しいことに挑戦する際はきちんと段階を踏んで物事を進める必要がありそうです」

――新規就農には初期投資も必要ですが、資金はどう工面しましたか?

「新規就農に関する国・県・市の補助金と、地域おこし協力隊の起業助成金を活用しました。公的金融機関からの借り入れも検討しています」

協力隊制度の新特例も農業系ミッションを後押し

地域おこし協力隊の任期は従来、基本的に1〜3年間でしたが、2026年度から特例的に最大5年まで延長できる制度が新設されました。延長の条件は、隊員が地場産業等の担い手として起業・事業承継まで見据えているか、などです。

「地場産業等」に何が含まれるのかは最終的に隊員を受け入れる自治体が判断することになっていますが「農業の技術を習得し就農すること」も該当する可能性が高いとみられています。

今回新設された特例は、農業系ミッション従事者への追い風となることも予想されます。小吹さんの新規就農にも勇気づけられ、長崎県内でも農業系ミッションへの注目度がさらに高まりそうです。

自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト

地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
弊社では、着任後のミスマッチを防ぐため、自治体に伴走して募集ミッションや受け入れ環境の設計からサポートしています。
現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。

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