
高定住率、三方良しの秘訣を探る!東彼杵町3者座談会
2026年10月更新
現在募集中の地域おこし協力隊情報
長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。
茶畑が広がる田園風景に、心地よく吹き抜ける風。その風のように、地域おこし協力隊がのびのびと活動し、地域の人々と交わり、地域に根を下ろし定住していく。
その背景にあるのは、自治体職員の努力か、隊員との巡り合わせか、それとも地域づくり会社との連携かーー?
地域おこし協力隊の定住率(※1)が全国平均を上回り、県内で唯一途中退任者ゼロの東彼杵町(ひがしそのぎちょう)の実態を探るため、現役隊員・隊員OB、担当職員、地域のキーパーソンの3者に話を聞きました。インタビュアーは、一般社団法人長崎県地域おこし協力隊ネットワーク(以下、NCN)の宮田です。
<プロフィール>
写真左から
山下 晋弘(やました くにひろ)さん
東彼杵町 総務課 企画係長
2004年に東彼杵町役場に入庁 水道課・教育委員会・産業振興課・財政管財課を経験。現在は総務課企画係で地域おこし協力隊を担当して3年目(取材時)。北郷 諭(ほくごう さとし)さん
2019年2月〜2022年1月 東彼杵町地域おこし協力隊OB
現在は、やりたかった半農半Xの暮らしを実現。農業法人FORTHEES(フォーティーズ)に勤務する傍ら、イラスト制作の仕事を請け負う。斎藤 節子(さいとう せつこ)さん
2022年4月〜2025年3月 東彼杵町地域おこし協力隊
退任後は、夢だった食堂「hinata(ひなた)食堂」をオープン予定。また、コワーキングスペースや宿の開業も見据えて、賃貸物件を改装&勉強中。3児の母。森 一峻(もり かずたか)さん
一般社団法人 東彼杵ひとこともの公社代表理事
同社は2022年度の地域づくり表彰で「国土交通大臣賞」を受賞。代表取締役を務める日々研究所株式会社では、地域や企業の人材育成や広報の支援を行う。インタビュアー:宮田 友香(みやだ ゆか)
2015年10月〜2018年3月 松浦市地域おこし協力隊OG
福岡県出身。NCN代表理事。長崎県内の19市町の地域おこし協力隊員や担当職員、関わる地域の方と対話を重ねる中で、のびのびとした風土が印象的な東彼杵町で座談会を企画。
※1…定住率とは、地域おこし協力隊が任期終了後、着任地に定住・定着した割合を示す数値

長崎県の中心部に位置する東彼杵町。人口約7,300人(2025年1月現在)
会場は地域交流拠点Sorrisoriso(ソリッソリッソ)。2025年12月で10周年叶えたかった暮らしを実現!隊員OBの移住経験
宮田:早速ですが北郷さん、東彼杵町に移住した経緯を教えてもらえますか?
北郷:もともと長崎市出身で、東京でスキルを身につけてUターンする計画だったんです。東京で何年か働いて、有楽町の「ふるさと回帰支援センター」に行って移住相談をして。仕事の希望条件を伝えたら「そんなのないよ」って言われて。
宮田:厳しい!苦笑
北郷:現実って厳しいじゃないですか。求人に書いてあるお給料を見た時に、生活できるのかもわからなくて。お金の感覚を知るためにも、ひとまず長崎で暮らしてみようと思って。
宮田:都心部と長崎ではお金の感覚が違いますもんね。
北郷:そうなんですよ。色々探して東彼杵町の地域おこし協力隊の募集を見つけて、すごく面白そうだなと思って応募しました。それで着任したんですけど、すぐにコロナ禍になって、担当する予定だったプロジェクトが動かなくて。フリーミッションのような感じで自由にさせてもらっていて、居心地が良かった観光協会に席を置いていました。

大学で美術を学んだ北郷さん。その経験を活かしてイラスト制作を行う宮田:東彼杵町観光協会は、地域おこし協力隊OBの飯塚さんが代表を務められていますね。イラストは隊員活動の中でも描かれていたんですか?
北郷:チラシとかで描いていました。「くじらたより」のイラストもお願いしてもらって。
宮田:くじらたより?
森:「くじらたより」は、コロナ禍で仕事が止まっている業種の人を守るために、町内の飲食店のみなさんにお弁当を、宿泊業などの人たちに配達をお願いしたお弁当宅配サービスです。。そのアイコンになるイラストを北郷さんに描いてもらいました。

森さんの呼びかけで地域が結束した「くじらたより」のアイコンイラスト宮田:へ〜!素晴らしい取り組みですね!もともと北郷さんと森さんはどういう出会いだったんですか?
北郷:隊員OBの飯塚さんに連れられて、だったと思います。
森:北郷さんがイラスト描けるっていうのはInstagramを通じて伝わってきてたんです。地元の交流イベントで話す機会が増えて。それでイラストをお願いしました。
宮田:北郷さんのイラストは今や東彼杵町のアイコンになってますね。定住しようって気持ちは最初からありました?

北郷さんのイラストをアイコンに掲げた移住相談会・東彼杵町ブース北郷:長崎に戻りたいって気持ちはあって。住む場所はどこでもよかったんですけど、東彼杵町は居心地が良かったですし、実家までが高速で1時間でちょうど良い距離感なのも良かったですね。
東彼杵町では、そんなに干渉もされないし、移住者の方も多いから感覚的なところも感じのいい方が多いですし。自分の親世代の農家さんも程よい距離感でお付き合いいただいてて、居心地がすごくいいです。
宮田:農家さんって、おおらかで芯が強い方が多いイメージです。
北郷:作物によっても違いますよね。お茶農家さんっておしゃべりな人が多くないですか?
宮田:え!そうなんですか!?おもろ〜。
斎藤:確かによくしゃべる!みんなおしゃべりな気がする。

茶摘みの様子。会話しながら和気あいあいとした雰囲気「特別なことは何も」。隊員の不満が出ない理由
宮田:東彼杵町は移住者の方が多いっていうお話がありましたが、その背景には森さん率いる東彼杵ひとこともの公社の努力があるんでしょうか?
山下:それはあるでしょうね。ひとこともの公社の活動がはじまって、Uターン者や地域内の人が外からも見えるようになりましたよね。
もともとは森くんだけが仲間と頑張っていたところに、地域おこし協力隊OGOBがつながって。宿をやったり、観光協会をやったり、まちのキー的な存在として何人もいる状況になっているので、移住者が自分にあった相談相手を見つけやすいかもしれないですね。外の人と地元の人との緩衝材になってくれる人が増えていると感じます。

東彼杵ひとこともの公社が営むサイト「くじらの髭」で地域のキーマンを紹介森:地域おこし協力隊OBのジンさん(*)が宿を開いてくれたのも大きいんじゃないですかね。奥さんのあっこさんも、外の人と地域の人とのつなぎ役になってくれてて。
北郷:ジンさんとは任期が少し重なっていて、あっこさんにもお世話になりました。「地域のおじさん連れて歩くからおいで」って連絡があって、みんなで探検みたいなことをしたり 笑。
斎藤:私もあっこさんが「きんかん採りにいくけど一緒に行く?」とか誘ってくれますね。地元の人より地元を楽しんでるかも。

“ジンさん”こと齊藤仁(さいとう ひとし)さんと“あっこさん”。夫婦で「さいとう宿場」を営む北郷:そう言えば、東彼杵町の隊員間では、行政への不満とかも出ないですよね。
斎藤:そうそう、ないよね。
宮田:せっちゃんは、今、起業準備を頑張ってるよね。山下さん達職員さんとの信頼関係や起業への理解、森さん達地域の方の応援があって、注力できてるんだろうなって感じます。
斎藤:行政や地域があっての私っていうのもあるけれど、起業は自分の努力があってこそっていうのもありますね。
宮田:確かにそうだね。せっちゃんは起業に向けていくつも副業して、経験や知識を積み重ねていてすごいと思う。そういう点では、任期2年目のときに雇用形態を「雇用型(会計年度任用職員)」から「委託型(個人事業主)」へ切り替え(※2)てから、起業準備がしやすくなったよね。
※2…地域おこし協力隊の雇用形態は主に、隊員が自治体に雇用される「雇用型」と隊員が個人事業主として自治体と契約を結ぶ「委託型」があり、その裁量は自治体に委ねられている

斎藤隊員が開業予定の「hinata(ひなた)食堂」。任期2年目からミッションに起業準備が加わった斎藤:雇用形態を途中で切り変えたのは、森さんが山下さんに「雇用形態って途中で変えられますよね?」って話をしてくれて。それがはじまりなんです。
宮田:えー!森さんの一言がはじまりだったんですね!
山下:そうでしたね。「雇用形態を途中で変えても大丈夫なんですか?」ってよく聞かれます。逆に何か問題があるかな?って思いますけど。
宮田:実際には、雇用形態を途中で変える自治体は珍しいですよね。
東彼杵町の隊員の活動のしやすさの背景には、「協力隊って何?」っていう定義が町内で共有されているのも大きいのかなって感じるんです。起業に向けた活動時間や経費の考え方においてもそうなのかなって。協力隊の意義を町内で共有できている理由ってありますか?
山下:役場内は部署を越えて親しいっちゃ親しいですね。職員全体の交流の場も年に2回くらいはあるし、職員間の風通しはいいですね。
斎藤:壁がないからじゃないですかね?行政にも地域にも。
森:職員さんもみんな個人対個人のつながりで付き合ってくれるので、わからないことや聞きたいことを気軽に話せる関係性があるのは大きいかもしれないですね。
山下:個々の信頼関係があるからこそ成り立っていると思いますね。

東彼杵町ではルールは守りつつ柔軟に地域おこし協力隊制度を運用する地方に必要なのは「寛容性」
山下:東彼杵町の隊員は、運良くいい人が来てくれたって思っています。
森:モラルの線引きができている、そういう人たちが応募してくれたっていうのは大きいなって思いますね。寛容性が高い人が来てくれていると思います。
宮田:確かに地方で暮らすには「寛容性」は大事ですよね。自分の主張ばかりじゃうまくいかない。ゆるやかに認め合うことは、地方では特に大事だなって感じます。
森:ソリッソリッソをはじめたときも、当時のまちづくり課の係長の髙月さん(*)がめっちゃ寛容性高くて。
山下:高田純次並やもん。全部笑いに持っていく。笑
宮田:たかつきさん?
山下:髙月課長は、いま私の上司で、総務課の課長です。
森:髙月さんの寛容性があったからこそ、東彼杵ひとこともの公社もここまで来れたと思いますね。
斎藤:髙月さんは「いいものはいい」「悪いものは悪い」ってちゃんと言ってくれるのがすごくいいなって思う。
森:そう。「ここは絶対守った方がいい」っていう所はちゃんと教えてくれる。
宮田:髙月さんとのそういうやり取りの中でも、寛容性とか、地域性とか、地域で守っていく部分が受け継がれているのかもしれないですね。せっちゃんと話をしてても、森さんたちの思いを感じながら暮らしているのかなって思います。
斎藤:当たらず障らず。深すぎず広く。絶妙な距離感で。
宮田:さすがせっちゃん 笑。

地域づくりプレイヤーとして必要時には助け合う斎藤隊員と森さん地域おこし協力隊は『地域の魅力を引き出してくれる存在』
宮田:最後に、東彼杵町にとっての地域おこし協力隊とは?教えてください。
山下:行政的に最近言っているのは、地域の役に立ちたいという思いを持って移住してくれる人達なので確度が高いというか。地域の魅力を引き出して、賑わいづくりに貢献してくれて、隊員1人の移住がもっと何人もの移住につながる人達。
普通に移住してくれる人も有り難いんですが、協力隊が1人でも2人でも来る方がまちにとっていいのかなと考えて、協力隊の採用を続けています。
斎藤:隊員で、分野ごとのキーマンができればいいですよね。
森:自分達は隊員とご一緒することがめちゃくちゃ多くて、すごく助かっています。自分達が町外での活動も増えてきて、これからはせっちゃんや隊員が外の人と地元の人の接点を担ってくれるのかなって感じています。
本来はみんな、自己実現のために生きている。ちょうどいい距離感って大事。適度に、お互い求めるときに、助け合えればいいかなと思いますね。
山下:東彼杵町では、少なくとも毎年3人くらいは隊員を採用したいと思っています。
宮田:10年経てば30人になりますね。
山下:そうそう。高月さんがよく言うんですけど、東彼杵町の場合、毎年若い世代を4、5世帯増やして一定レベルに達すれば、人口が回復していくと。
宮田:人口回復に向けて、毎年人口の1%移住者がいればいいっていいますもんね。毎年、隊員を採用して人口の1%を着実に増やしているんですね。
山下:そうなんです。有効な投資だと思いますね。

東彼杵町のウェブサイトでは、退任した隊員も紹介https://www.town.higashisonogi.lg.jp/soshiki/somuka/3/1/3026.html
ふかふかの土から、ひとことものが育つまち
親戚の集まりのような座談会を振り返って、ふと思い出したのが「風土」という言葉。
「風」は外から新しいものを運んで来る人、「土」は地域に根ざす人、と言われます。
「風」にのって隊員がやってきて、「土」を混ぜ、ふかふかの土からひとことものがすこやかに育っている東彼杵町。寛容性があり居心地がよい「風土」が内から外へ伝わっていて、私は外からそれに惹かれてこの座談会を企画したんだなと気付きました。
行政と民間、都会と地方の狭間にいる地域おこし協力隊。東彼杵町ではその可能性をも、行政と地域の理解と応援で、育っているように感じました。

隊員達は昔からの親戚のように地域に馴染んでいた*関連記事*
「ジンさん」と親しまれる齊藤仁(さいとう ひとし)さんのインタビュー記事
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斎藤隊員の移住体験記
「子育て」でつながる移住生活
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【*終了しました】配達代行サービス「くじらたより」を5/1(金)より開始いたします。
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「のろのろ」つくり続けていたい。『“町のおじさん”見習い ホクゴウサトシさん』
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https://kujiranohige.com/person/22360/
自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト
地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
弊社では、着任後のミスマッチを防ぐため、自治体に伴走して募集ミッションや受け入れ環境の設計からサポートしています。
現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。
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