2025年06月27日

「残ってくれたことに感謝してる」地域の人に愛され、叶えた食堂開業

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2026年10月更新

現在募集中の地域おこし協力隊情報

長崎県内の地域おこし協力隊に関心をお持ちの方へ。
弊社が自治体と伴走し、募集企画や受け入れ体制の設計などを支援している募集プロジェクトを紹介します。
地域のリアルやミッションの背景まで深く取材・把握している注目のプロジェクトです。

例えば、縁(ゆかり)はないけれど、とても気に入った町があったとします。そこで「何かお店をしたい」と思い描いた場合、多くの人は人脈も物件探しもゼロからのスタートになります。

では、“地域おこし協力隊”の3年間を通してお店のオープンを目指した場合はどうでしょうか?

今回は、3年間の任期を経て食堂をオープンした、東彼杵町(ひがしそのぎちょう)の元隊員・斎藤節子(さいとうせつこ)さんのお話です。

斎藤さんが暮らす東彼杵町は、日本一に輝いたそのぎ茶が名産の自然豊かな町

<斎藤節子さんプロフィール>
埼玉県出身、3児の母。
2022年4月〜2025年3月 東彼杵町地域おこし協力隊として活動
2025年4月 hinata(ひなた)食堂オープン

斎藤さんの過去の紹介記事はこちら
「子育てでつながる移住生活」
「定住にも起業にも役立つ!任期3年目・愛され隊員の地おこマインド」
「高定住率、三方良しの秘訣を探る!東彼杵町3者座談会」


「町の期待に応えないと…」2年目に感じた焦り

斎藤さんのミッションは、情報発信と移住に関する業務。明るく何事も積極的に取り組む姿勢が評価され、1年目・2年目と着実に人脈と信頼を築いていました。

「何も決まっていなかったけど、テレビの取材で“お店をやりたい”と言っていたんです(笑)。そしたら、“いつやるの?いいところ見つかった?”って地域の人が気にしてくれるようになって」

その言葉が嬉しい反面、期待に応えないと…と少しずつ焦りを感じ始めていたと言います。物事が動き出したのは、2023年のそのぎ茶市(*1)後に行われた地域の女子会でした。

「役場までの通勤路に、いつもシャッターが降りている古い建物があって。何屋さんなんだろう?お店をするならここら辺がいいなぁと思っていたんです。たまたまその女子会で建物のことを聞いてみたら、その会に持ち主の娘さんがいて…」

シャッターが降りたその建物は、畳屋の跡でした。店主が体調を崩して1年半ほど前に廃業していたその建物が、斎藤さんの「貸してくれない?」の一言で動き出します。

まずは片付けや掃除を行い、2024年のそのぎ茶市に出店。畳屋が営まれていた頃、茶市で地域の野菜やゴザなどの販売をしていたとのことで、当時の風景を復活させました。

100年以上の歴史をもつ建物
100年以上の歴史をもつ建物。明治・大正までは旅館が営まれていた

*1…毎年5月に開催される新茶の市。茶農家や製茶問屋、商店などが多数出店する


雇用形態を委託型に変更し、開業へスピードアップ

不思議な縁から物件が決まり、開業へ歩み出した斎藤さん。町と協議し、2年目からは雇用形態を“雇用型”から“”委託型へ変更(*2)、ミッションに“起業に向けた準備”を付け加えてもらいました。

“起業に向けた準備”を加えたことで、活動費の一部を内装のデザイン費や食品衛生責任者の取得費、改修に使用する材料などの購入費として活用できるようになりました。

「もちろん、従来のミッションもやりながら開業の準備を進めました。情報発信や移住相談窓口などをこなしながら、空いた時間は店舗の改修に。とにかく忙しくて、この時期はほぼここにいたような気がします」

食堂ができると地域に知れ渡ると、「こんなんじゃ飲食店はできん!」と高圧洗浄機を持って掃除に来てくれる人や、「うちではもう使わんけん」と大量の食器を持ってきてくれるお母さんなどが立ち寄ってくれるように。さらに、嬉しいニュースが飛び込んできました。

地域からの寄付で集まった食器
地域からの寄付で集まった食器は、隣町の波佐見焼のものも

「町内のある施設が閉所することになって、そこにある厨房設備を譲ってもらえることになりました。買うと数百万はかかったと思うので、本当に助かりました。そのほかにも、大工さんの紹介で、閉店する飲食店からも調理器具や什器なども安価で譲っていただきました」

*2…このエピソードの詳細は、過去の記事「高定住率、三方良しの秘訣を探る!東彼杵町3者座談会」で


資金は各種補助金を使いながら…それでも不安は募る

開業資金は、3つの補助金(*3)と日本政策金融公庫からの融資、そして自己資金でまかないました。

「商工会の創業塾に通ったり、商工会職員さんのサポートを受けながら事業計画の作成や補助金申請の書類作り…。とにかくパソコンと数字に向き合うことも増えました。融資がおりなかったらどうしよう…と不安に思うこともありました」と斎藤さん。

無事融資もおり、2024年9月に着工。改修は、地元の大工と斎藤さん、隊員仲間から紹介してもらった空間デザイナーの田山勇輔さん(川棚町)で主に行いました。

「内装は、田山さんに大まかな希望を伝えてデザインしてもらいました。ワンオペでの営業なので、吉野家みたいなカウンター席も私の要望です(笑)」

大工(中央)は、地元の大工
大工(中央)は、古民家の改修が得意な地元の大工を紹介してもらい依頼
自身でも改修作業
大工に教わりながら、自身でも改修作業を行った
古い梁などを生かした
古い梁などを生かし、昔の面影を残した

*3…斎藤さんが活用した補助金

・東彼杵町地域おこし協力隊起業・就業安定化支援補助金(最大100万円)
・東彼杵町起業家等支援補助金(2/3補助最大100万円)
・長崎県空家等管理活用支援法人プラットフォーム協議会 空き家deミライ創出事業(4/5補助最大150万円)

メニューは日替わりのきまぐれ定食とくじら焼

「人が集まる場所になるといい」と斎藤さん。取材をしている時にも、前を通る下校中の子どもが手をふったり、買い物帰りの人がふらりと立ち寄って話をしたりとすでに憩いの場になっていました。

提供するのは、家庭的な味付けの定食と“くじら焼”。くじら焼は、地域おこしに取り組む「東彼杵ひとこともの公社」と九州電力が共同開発した商品を事業継承で譲り受けました。

日替わり定食は800円。地元の味噌や食材を使い、ご飯がすすむ味付けを意識している
クジラ焼は250円〜
くじら焼は250円〜で、あんこ・白あん・ポテサラソース・カスタードの4種類

「小学校帰りの子どもが立ち寄って、くじら焼の耳を食べに来たりするんですよ」と楽しそうな斎藤さん。2階をコワーキングスペース(*4)として開く準備をするなど、さらなる活気を呼ぶ仕掛けも考えています。

コワーキングスペース
コワーキングスペースの改修には、「空き家deミライ創出事業」の補助金を活用

現在は、「hinata食堂」のほか、町から委託を受けて引き続き移住に関する業務も行っているそう。「地域おこし協力隊としてこの町に来たので、役場との繋がりも保っていきたい」と地域への思いも話してくれました。

*4…様々な人が共同で使用する協働のワークスペースのこと

斎藤さんに質問!隊員のお悩みあるある

ーーやっておけばよかったと後悔していることはありますか?

「2年目の活動に入ったらすぐ、起業に向けて準備しておけばよかったなと思います。特に資金の準備ですね。私は副業をして資金を貯めたりもしていましたが、もっと早くにやっておけばよかったな…と。」

ーー起業に向けて活用したほうが良い制度などはありますか?

「商工会の入会はオススメですね。融資を受ける際に事業計画を作ったり、補助金を受けるときにも書類を作ったりしないといけないのですが、プロの方にサポートしていただいて本当に助かりました。準備中は何度も足を運びました(笑)」

ーー地域でお店を開店するコツはありますか?

「まずは口に出すことだと思います。私も最初は何も決まっていないのに“お店をしたい”と言っていたんですが、そこから地域や役場の人が気にかけてくれて流れができたと感じました。特に東彼杵町は人が熱い土地なので、口に出すというのがポイントだったように思います」

斎藤さんに隊員として活動して嬉しかったことを尋ねたら、

「子ども食堂で知り合って、hinata食堂で出しているお漬物のレシピを教えてもらったお母さんがいるんですが、オープンした時に“こんな食堂を作って、この町に残ってくれたことに感謝してる”と言われたことですね。もう泣きました(笑)」という答えでした。

パワフルで、周りも笑顔にする斎藤さんの3年間がこのお母さんからのメッセージに込められているように思いました。

隊員の活動はわずか3年。斎藤さんが残り2年を駆け抜けたように、あっという間の3年間です。縁のない土地での開業でしたが、隊員の活動を土台に準備をしたからこそ、実現した面もあるのではと感じました。

“退任後どうしよう” “地域でお店をやってみたいけど…”そう悩んでいる人は、ぜひ斎藤さんに会いに行ってみてください。「よし、やってみよう!」と前向きな気持ちが芽生えるはずです。

<hinata食堂>
〒859-3806 長崎県東彼杵郡東彼杵町蔵本郷1865
営業時間/定食11時〜14時(なくなり次第終了)、くじら焼13時〜18時(なくなり次第終了)
定休日/不定
メニュー/日替わり(きまぐれ定食)800円、くじら焼250円〜
※最新情報はInstagramでご確認ください。

自治体と弊社が二人三脚で設計した、安心の協力隊募集プロジェクト

地域おこし協力隊への挑戦を検討している方へ
今回ご紹介した記事のように、地域で活躍するためには「地域の受け入れ体制」や「本音のコミュニケーション」が欠かせません。
弊社では、着任後のミスマッチを防ぐため、自治体に伴走して募集ミッションや受け入れ環境の設計からサポートしています。
現在、その取り組みの一環として各自治体で新たな仲間を募集中です。受け入れ体制がしっかり整った環境で挑戦したい方は、ぜひ募集記事をご覧ください。

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